【8月9日 AFP】ブラジルで開催中のリオデジャネイロ五輪で、ドーピング違反の過去がある水泳選手とそのライバル選手らとの間で非難合戦が巻き起こっていることを受け、国際オリンピック委員会(IOC)は8日、選手たちに対し互いに「敬意」を払うよう促した。

 リオデジャネイロ五輪では、先週末の競泳男子400メートル自由形で金メダルを獲得したマック・ホートン(Mack Horton、オーストラリア)が競技前に、孫楊(Yang Sun、ソン・ヨウ、中国)を「薬物違反者」だと批判し、中国国内で怒りの声を巻き起こしていた。

 さらに7日には、2度のドーピング違反歴がある競泳女子のユリア・エフィモワ(Yulia Efimova)が、他の選手から辛らつな言葉が投げかけられた。競技開始直前に五輪出場を許可されたエフィモワに対しては、観客からもブーイングが浴びせられた。

 こうした状況の中、IOCの広報担当を務めるマーク・アダムス(Mark Adams)氏は、IOCは言論の自由を尊重しており、対策を講じる予定はないと言明。一方で、選手には「落ち着いた」状況で競技をする権利があるとして、選手らに互いを尊敬しあうよう促した。

「私たちが言論の自由を尊重するのは明白だが、五輪は選手同士が互いを尊重し、互いの競技に臨む権利を尊重する場でもある」

「個別の事情によって異なるにしても、どこかに必ず各選手が落ち着いて競技するための一線がある。だから、選手には他の選手に敬意を払うように促す」

 アダムス氏はまた、ホートンと孫楊に対しIOCから処分が下される予定はないと語った。

「選手は競技後に多く発言するが、選手にはその権利がある。今のところ苦情は受けていないし、今以上のことをする必要はないと考えている」

 一方、リオ五輪の広報を務めるマリオ・アンドラーダ(Mario Andrada)氏によると、会場で聞こえるブーイングは、ブラジルにおけるサッカー愛の表れだという。

 アンドラーダ氏は「ブーイングはサッカー文化の一部。ブラジル人に(観戦マナーを)理解させるために教育が必要なものの一つだ」とした上で、「ブラジル人は平等主義的らしく、多くの国の選手に対してブーイングを浴びせることができるようだ。彼らがある選手にはブーイングをするのに、もう一方の選手にはしない理由を理解するのはとても難しい」と付け加えた。(c)AFP