【1月1日 AFP】パキスタン最大の銃のブラックマーケットがある同国北部の町では、映画の効果音のように銃声がこだまする。そこでは鉄くずから手作りされたカラシニコフ(Kalashnikov)銃などが、産業規模でスマートフォンより安価で売られている。

 ペシャワル(Peshawar)の南約35キロに位置する丘に囲まれた町、ダッラ・アダムケール(Darra Adamkhel)は、何十年もの間、犯罪の中心地だった。密入出国業者や麻薬の運び屋はもちろん、盗難車から大学の偽造学位まで、あらゆるものが調達できた。

 数世代にもおよぶ違法な武器などの取引は、かつてムジャヒディン(イスラム聖戦士)がアフガニスタン戦争で旧ソ連と戦うために、穴だらけの国境を越え同町で武器を買い始めた、1980年代に急増した。

 後に、この町はイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」の拠点となり、独自の厳しい規則と、2009年にポーランド人技師ピョートル・スタンチャック(Piotr Stanczak)さんが斬首されたような裁きの体制を敷いた。

 今日、武器以外はきれいになったダッラだが、ブラックマーケットの銃の職人たちは、町がある地域の治安向上と当局による違法な武器の取り締まり強化により、数十年続いた産業は廃れつつあると話している。

 ダッラには、世界で最も人気の武器の一つで、米連邦捜査局(FBI)の特殊部隊などで広く使用されている短機関銃MP5の複製品で知られているケタブ・グール(Khitab Gul)さんがいる。本物のMP5は数千ドルで販売されているが、グールさんの複製品は1年の保証付きで、約7000ルピー(約7800円)だ。しかも、完璧に作動するという。

 またダッラ製のカラシニコフ銃は、グールさんによると、ほとんどのスマートフォンより安い125ドル(約1万4500円)から売られている。グールさんは「ここの労働者たちはとても腕がよく、見せられた武器はなんでも複製することができる」と話し、「過去10年間で私は1万丁の銃を売ったが、苦情はない」と語った。(c)AFP/Sajjad TARAKZAI