【8月5日 AFP】にぎやかな街路では銃で撃たれて倒れた血まみれの人々が放置され、空き地には切断遺体が遺棄されている——ロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領が麻薬撲滅戦争を掲げて就任して以降、増える一方の死者数に、フィリピンのスラム街には恐怖が広がっている。

 ドゥテルテ氏は今年5月、圧倒的支持を得て大統領に選出された。半年以内に社会から麻薬と犯罪を撲滅すると公約し、そのためならば何万人でも犯罪者を殺害すると宣言。実際、ドゥテルテ氏の就任以来すでに数百人が死亡している。

 インターネット上では、テレビカメラの照明の中、血だらけの夫の遺体を抱きしめて泣き叫ぶ若い女性の写真が、人的犠牲を象徴するイメージとして話題を集めた。警察の張った黄色い非常線の向こうから、通行人がこわごわと様子を見守っていた。

 殺害されたのは、三輪タクシーの運転手だったマイケル・シアロン(Michael Siaron)さん(30)。バイクで乗り付けてシアロンさんを射殺した男たちは、ボール紙で雑に作った札に「麻薬密売人」と書き残していった。しかし、「夫は無実だった。誰かを傷つけたことなど一度もなかった」と妻のジェニリン・オライレス(Jennilyn Olayres)さんは強く反発する。

 フィリピンの警察当局は今週、ドゥテルテ大統領が就任宣誓を行った6月末からこれまでに麻薬絡みの容疑者402人を殺害したと発表した。この数字には、自警団とみられる武装グループに殺害された人数は含まれていない。

 一方、フィリピン最大のテレビネットワークABS-CBNによると、5月の大統領選以降に殺害された人数は603人に上り、うち211人が身元不明の武装集団によって殺されたという。