【7月31日 AFP】バングラデシュ警察は30日、イスラム過激派潜伏先の捜索で新たに得られた情報から、同国首都ダッカ(Dhaka)で今月1日に発生した飲食店襲撃事件の首謀者の1人がカナダ国籍を持つタミーム・チョードリー(Tamim Chowdhury)容疑者であることが分かったと発表した。

 捜査内容を知る関係者がAFPに語ったところによると、現在所在不明となっているチョードリー容疑者は3年前にカナダからバングラデシュに帰国して以来、若いイスラム教徒の過激化する活動を主導し、そのための資金も集めていたという。

 チョードリー容疑者は30代前半で、カナダとバングラデシュの二重国籍を持っているという。バングラデシュの対テロ当局者によると、同容疑者は多数の外国人や宗教的少数派などを殺害しているイスラム過激派組織「ジャマートゥル・ムジャヒディン・バングラデシュ(JMB)」の一派を指揮しているとみられる。

 今月1日にダッカのガルシャン(Gulshan)地区にある高級飲食店に武装した5人が押し入り外国人18人を含む人質20人を殺害した事件は、武装組織による襲撃としてはバングラデシュ史上最悪の事件となった。

 その約1週間の今月7日には、イスラム教の断食月「ラマダン(Ramadan)」明けを祝う祭り「イード・アル・フィトル(Eid al-Fitr)」の祈りをささげるため約25万人が集まっていた付近を武装集団が襲撃し、警官など3人が殺害された。

 匿名を条件にAFPの取材に応じた警察官は、「これまでの捜査で、タミーム・チョードリー容疑者がガルシャン地区の飲食店とショラキア(Sholakia)でのイード祈祷所襲撃の首謀者の1人であることが判明した」と述べるとともに、同容疑者はこれら2件の襲撃事件の実行犯と、今月26日にダッカ市カリヤンプール(Kalyanpur)地区で過激派の潜伏先を当局が強制捜査した際に殺害された9人の過激派を訓練していたと述べた。

 別の警察幹部がAFPに語ったところによると、チョードリー容疑者が過激派を養成していたことは、潜伏先の強制捜査で逮捕されたラキブル・ハサン(Rakibul Hasan)容疑者(25)の尋問で判明したという。

 AFPが閲覧した強制捜査の初期報告書によると、チョードリー容疑者らは、ハサン容疑者や強制捜査で殺害された9人の過激派に「金銭や爆発物、武器」を供給し「訓練してアドバイスを与えていた」という。またこの報告書によれば、ハサン容疑者は警察の取り調べに対し、チョードリー容疑者は過激派組織の潜伏先をたびたび訪問し、必要な資金を与え、聖戦や宗教に関する話をして激励したと話しているという。

 捜査当局は、ダッカの高級飲食店「ホリー・アーティサン・ベーカリー(Holey Artisan Bakery)」とイード・アル・フィトルの集会の襲撃はJMBの犯行だとしているが、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」は飲食店襲撃の犯行声明を出し、犯行現場の写真や、ISの旗を背後にポーズを取る容疑者5人の写真を公開していた。

 ハサン容疑者は警察の取り調べに対し、強制捜査で殺害されたのはISのメンバーだったと供述しており、捜査官は現場の潜伏先からISの旗や服を押収していた。しかし同国のシャヒドル・ホク(Shahidul Hoque)警察長官はこの供述を否定し、殺害された過激派はJMBのメンバーであると述べている。

 また別の警察幹部はAFPに対し、1年前に複数の外国の情報機関がチョードリー容疑者の過激派活動について警鐘を鳴らしていたことを明らかにした。警察は現在、チョードリー容疑者が指揮していたとみられるJMBの一派がISと関連しているかどうか捜査を進めている。(c)AFP