【7月30日 AFP】米反ドーピング機関(USADA)は29日、ロシアによる国家ぐるみのドーピング疑惑に関与したとされるニキータ・ロビンツェフ(Nikita Lobintsev)ら同国の五輪メダリストが、禁止薬物のメルドニウム(Meldonium)に陽性反応を示したと発表した。

 ロビンツェフについては、すでに国際水泳連盟(FINA)がリオデジャネイロ五輪への出場を禁止しており、USADAとしては今回の問題で新たな処分を科すことはしていない。

 南カリフォルニア大学(University of Southern CaliforniaUSC)は28日、カナダ人法学者のリチャード・マクラーレン(Richard McLaren)氏の主導で行われた世界反ドーピング機関(WADA)の報告書で名前が挙がっていた水泳部所属のロビンツェフとウラジーミル・モロゾフ(Vladimir Morozov)に対し、これ以上プログラムへの参加を歓迎しないとして競技への出場を禁止していた。

 USADAによると、27歳のロビンツェフは今年1月から世界反ドーピング機関(WADA)の禁止薬物リストに追加されたメルドニウムについて、ロシアのチームドクターから心臓機能を強化するためとして処方され、過去7年間にわたり使用し、10か月前に使用をやめたと説明していたが、今年6月16日の抜き打ち検査でこの薬物に陽性反応を示したという。

 USADAのトラビス・タイガート(Travis Tygart)会長は声明で、「この運動能力向上薬の使用には厄介なパターンがある。それはコーチの指示や医師の処方によるもので、同国のスポーツ界では慣例として増加傾向にあり、今回の例もその一つとみられる。選手たちがこれらの薬を使用するのは、当初の理由である健康のためではなく、運動能力を強化するためだ」と述べる一方で、「2016年6月30日に提供されたメルドニウムに関するWADAのガイダンスを基に、ロビンツェフは一定期間の資格停止や成績はく奪などの処分は科されない」としている。

 メルドニウムはロシア国内の薬局で売られているため、同国の選手は簡単に入手可能とされており、ロビンツェフは昨年8月に行われた第16回世界水泳選手権(16th FINA World Championships)の終了後と、その翌月にも再び同薬物を使用したとUSADAに説明している。

 ロシア政府機関の指示で数百件ものドーピング検査を隠ぺいしていた証拠がマクラーレン報告書によって示されると、2008年北京五輪の銀メダルに続き、2012年のロンドン五輪でも銅メダルを獲得したロビンツェフは、リオ五輪への出場を禁止されていた。

 USC水泳部のデイブ・サロ(Dave Salo)コーチは、ロビンツェフとモロゾフについて何年も一緒にチームと練習し、WADAとUSADAの抜き打ち検査も受けていたとして、FINAの決定には驚いたとコメントした。しかし、検査が実施されたのは、メルドニウムが禁止薬物に指定される前のことだった。

 サロコーチは、ロサンゼルスタイムズ(Los Angeles Times)紙に対し、「知りながらドーピングに関与していたのであれば、愚かなことだ」と語っている。(c)AFP