【7月29日 AFP】各国の五輪選手団がブラジル・リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)に到着する中、資格停止処分を科されたロシアの陸上選手たちは28日、モスクワ(Moscow)の老朽化したスタジアムで、リオデジャネイロ五輪に出場できない現実を突きつけられるだけの国内大会に臨んだ。

 国家ぐるみによるドーピングの証拠が発覚し、国際陸上連盟(IAAF)から国際大会への出場を禁止されたロシアの陸上選手67人のうち53人がこの大会に招集され、同陸連に対する不屈の精神と果敢な抵抗を訴えた。

 約150人の観客のほとんどが選手の友人や関係者だったこの慰めの大会について、女子円盤投げのエカテリーナ・ストロコワ(Yekaterina Strokova)は、「私たちは意見を言う必要がありました」と報道陣に話した。

「満足な結果を残し、私たちが国際レベルに十分であることを示す必要がありました。(リオに出場する)選手たちは、私たちを恐れていたはずです」

 国ぐるみのドーピングと不正疑惑の衝撃的な報告書をめぐり、昨年11月に暫定資格停止処分となったロシア陸上競技連盟(ARAF)は、リオ五輪に出場できなくなった選手を救済する目的で大会を開催した。

 1位の賞金10万ルーブル(約15万5000円)のほかに最高50万ルーブル(約77万5000円)の現金ボーナスも与えられるこの大会について、ARAFのドミトリー・シリャフチン(Dmitry Shlyakhtin)会長は、「これは、われわれができなかったことに対する具体的な償いだ」と報道陣に語った。

 シリャフチン会長はまた、リオ五輪期間中に連盟として別の大会を実施する計画はないと話し、ボイコット合戦となった1980年のモスクワ五輪と1984年のロサンゼルス五輪で、別の大会が開かれたような冷戦時代の慣例については否定した。

 大会には、男子ハードルの世界王者セルゲイ・シュベンコフ(Sergey Shubenkov)や女子走り高跳びのマリア・クチナ(Maria Kuchina)をはじめとした選手が出場し、ビタリー・ムトコ(Vitaly Mutko)スポーツ相もサプライズで登場した。

 女子100メートルハードルのベラ・ルダコワ(Vera Rudakova)は報道陣に対し、「もちろん、この大会は五輪の代わりにはなりえません」と話すと、「これは私たちが最高の状態で、母国のために(リオで)戦う準備ができていたということを自ら確信するためのものです」と主張した。

 女子棒高跳びで2度の五輪金メダルに輝くエレーナ・イシンバエワ(Yelena Isinbayeva)は、出場禁止を決定した陸連関係団体との法廷闘争のため十分な準備ができず、大会には出場しなかった。

 イシンバエワは、「これからリオへ行く選手、もしくはすでに現地入りをしている選手はくじけません」と話し、ロシア選手はリオ五輪で披露するパフォーマンスで「あらゆる人々を困惑させ」、「世界を混乱させる」だろうとつけ加えた。(c)AFP