【7月27日 AFP】エチオピアの科学者チームが、蚊がニワトリの臭いを強く嫌うことを発見し、毎年数十万人の死者を出している感染症、マラリアを防ぐ革新的な方法の開発に期待を寄せている。

 エチオピア・アディスアベバ大学(Addis Ababa University)のハブテ・テキエ(Habte Tekie)教授率いる昆虫専門家のチームは、蚊が人間や他の動物の血を吸う一方でニワトリには近づかないことに着目して今回の研究を行った。

 テキエ教授はAFPの取材に「マラリア蚊がニワトリから発せられる臭気を嫌う化学的根拠を詳しく調べた。その結果、ニワトリから得られる化合物が防虫剤として非常に優れた可能性を秘めていることが分かった」と語った。テキエ教授によると、蚊はニワトリを捕食動物とみなすためニワトリを避けるという説があるという。

 エチオピア西部にある3つの村で実験を行った結果、ニワトリを入れたかごをつるして、その下で眠った家族の家には翌朝、蚊がいなかった一方、ニワトリを室内に入れなかった家には蚊が存在した。

 しかしニワトリを入れたかごをベッドの上につるすと眠りにくいため、その後の実験ではニワトリの抽出物を入れた薬瓶を村民らに支給した。この実験でも、同様の結果が得られた。

 英医学誌「マラリア・ジャーナル(Malaria Journal)」に最近発表された今回の研究成果は、無臭防虫剤の開発を目指す、スウェーデンの科学者チームとの新たな共同研究に利用される見込みだ。

「この防虫剤は、人間に害なく使用できる上、土壌や水を汚染したり、人体に害を及ぼしたりする残留物も出さない。さらに、マラリア予防対策に容易に組み込むことができる」と、テキエ教授は指摘した。

 エチオピアの1億人近い人口の6割が、マラリアの脅威にさらされている。

 テキエ教授によると、この一風変わったチキン抽出物は「完全に自然由来のもの」になる見込みで、蚊が耐性を獲得する可能性は「極めて低い」という。

 現在のところ、マラリアのワクチンは存在しない。世界保健機関(WHO)が発表した最新の統計によると、2015年には43万8000人がマラリアで死亡したという。(c)AFP