【7月25日 AFP】国際オリンピック委員会(IOC)がロシアのリオデジャネイロ五輪出場を条件付きで認めたことを受け、世界反ドーピング機関(WADA)は24日、声明で「失望した」と発表し、IOCの決断を批判。WADAは自分たちが「クリーンな選手にとっての最良の結果」を目指してきたにもかかわらず、全面禁止の勧告をIOCが無視したことについて、遺憾の意を示した。

 WADAは先日、カナダのリチャード・マクラーレン(Richard McLaren)教授の下で行われた調査の結果を公表し、ロシアのさまざまなスポーツで国家主導の組織的なドーピングがまん延していた証拠を示していた。そして中立な立場での個人参加を除き、ロシア五輪委員会(ROC)傘下の全選手の五輪およびパラリンピック出場を禁止するよう、IOC側に求めていた。

 WADAのクレイグ・リーディー(Craig Reedie)理事長は、「IOCがWADA理事会の勧告に留意しなかったことに失望している。われわれはマクラーレン調査の結果に基づき、率直かつ強力な統一性のある手段を求めていた」とコメントした。

「ロシアの国家主導のドーピングプログラムは、世界反ドーピング規定が体現するクリーンなスポーツの原則を著しくおとしめている。それはマクラーレン報告書によって、論理的な疑問を差し挟む余地なく、明確になっていたはずだ」

 IOCのトーマス・バッハ(Thomas Bach)会長は、クリーンなロシア選手の権利を守るため、完全な締め出しを見送った。しかしWADAは、出場可否の判断を下す責任をIOCが各スポーツの統括団体に放り投げたのは、混乱の原因にしかならないと考えている。

 WADAのオリビエ・ニグリ(Olivier Niggli)事務総長は、「WADAはIOCの自治と、彼らが五輪憲章に基づいて下した決断を尊重するが、彼らの取ったアプローチ、そして設定した基準は、間違いなく統一性の欠如という問題を引き起こす。クリーンな選手の保護も難しくなりかねない」と話している。

 IOCは同日、ロシアの組織的なドーピングを告発した陸上のユリア・ステパノワ(Yuliya Stepanova)について、個人資格でのリオ五輪出場を認めない決断を下した。ニグリ氏はこの決定についても失望をあらわにしている。

「WADAはこれまでもずっと、個人資格で出場したいというユリアの願いを支持してきた。彼女は史上最大のドーピングスキャンダルが明るみに出るきっかけをつくった勇敢な人物だ。今回のIOCのメッセージが、告発を考えている人たちにどう受け取られるのか、非常に憂慮している」

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