【7月21日 AFP】医師らはこれまで、血液の循環、消化器系、神経などが記された人体と各器官の信頼できる地図を手にしてきたが、長年にわたり、詳細がはっきりしない一つの「グレーな臓器」にだけは常に業を煮やしてきた──脳だ。

 神経科学者、コンピューターの専門家、技術者などからなる研究チームは20日、人の耳と耳の間に広がるこの謎の領域の新たな地図を製作したと発表。これまでで最も正確な「脳の地図」である可能性があるという。

 地図作製の過程では、大脳皮質または灰白質と呼ばれる、脳のしわの多い外層部分で、これまで特定されていなかった部位100近くが見つかった。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された今回の研究に共同で資金を提供している米国立衛生研究所(NIH)のブルース・カスバート(Bruce Cuthbert)氏は「これら最新の知見とツールは、人間の皮質の進化の過程、さらには脳の特化した各部位が人の健康や病気で果たす役割などを説明する助けになるはずだ」と話している。

 この新たな地図によって、将来的には「脳外科手術にかつてないほどの正確さ」が提供される可能性もあると、カスバート氏は期待を寄せる。

■「天文学にも似ている」

 1909年、ドイツの神経学者コルビニアン・ブロードマン(Korbinian Brodmann)氏は、史上最も有名であろう脳地図を発表した。同氏の脳地図は、部位を構成する細胞の種類がそれぞれ異なるという発見に基づいて作製された。

 大脳皮質を数十の領域に区分した「ブロードマンの脳地図」は、現在でも使われている。

 随意筋の動きや、言語、視覚、音声、性格の各側面など、それぞれをつかさどる脳の部分については、これまでにも大まかに判明していた。

 だが、脳の部位がいくつ存在するかや、特に各部位がどのような働きをしているかをめぐっては、科学者らはいまだに意見が分かれている。

 研究チームによると、右脳と左脳にはこれまで、それぞれ83の部位があることが知られていたが、今回発表された最新の脳地図により、この数は180にまで増加したという。

 研究では、さまざまな画像検査法を用いて成人210人の脳を調べた。研究チームは、これらの得られたデータを組み合わせ、より詳細な部位についての情報を得ることができたとしている。

 研究チームは次に、新たに開発したソフトウェアを、別の成人210人からなる新たなグループを対象に試験を実施した結果、個人差はあるものの、新グループの成人の脳でも、脳地図に示された部位を正確に特定できることが分かった。

 論文の執筆者で、米ワシントン大学(Washington University)医学部のマシュー・グラッサー(Matthew Glasser)氏は「この状況は、天文学に似ている。地上の望遠鏡によって宇宙の比較的大まかなイメージがつくられた後に、大気を補正する補償光学や、宇宙望遠鏡が登場したようなものだ」と説明した。(c)AFP/Mariëtte Le Roux