【7月18日 AFP】パキスタンでセルフィー(自撮り)画像をソーシャルメディア(SNS)で公開して有名人となった女性が兄に絞殺された事件で、この兄が17日、記者会見に臨み、妹の殺害について「恥じていない」と語った。パキスタンではこうした名誉殺人が続発しており、今回の事件を受けてその是非をめぐり国を二分する議論が再燃している。

 SNS上に自撮りの写真や動画を投稿して人気を集めていたカンディール・バローチ(Qandeel Baloch、本名ファウジア・アジーム、Fauzia Azeem)さんは15日夜、東部パンジャブ(Punjab)州ムルタン(Multan)近郊の実家で、実の兄であるムハンマド・ワシーム(Muhammad Wasim)容疑者に首を絞められて殺害された。ワシーム容疑者は父親の告訴を受けて翌日に逮捕された。

 ムルタン警察が17日に開いた記者会見で、ワシーム容疑者はバローチさんを絞め殺したことを認め、「妹は1階にいて、両親は屋上で寝ていた。午後10時45分頃、妹に錠剤を与えた。その後で彼女を殺した」と説明した。自分独りでの犯行だったとも述べた。

 ワシーム容疑者はその上で「自分がしたことは、みじんも恥じていない」「いかなる事情であろうと、あんなこと(バローチさんによる自撮り画像の投稿)は全く容認できない」と主張した。

 パキスタンでは毎年、何百人もの女性が「名誉」を理由に殺害されているが、法律の規定で犠牲者の家族が許せば殺害者は罪に問われないため、殺害者の大半が無罪放免となっている。今回の事件のように、殺害者自身も被害者の近親者であることが多い。

 バローチさんが公開していた画像は、欧米の基準からすれば十分に許容される内容だが、極めて保守的なイスラム教国であるパキスタンでは多くの人から破廉恥と見なされていた。とはいえ、バローチさんの殺害は国民の間に衝撃や反発を引き起こしている。

 東部の都市ラホール(Lahore)で16日夜に行われたバローチさんを悼む集会には多数が参加。事件に関して公正な説明を求めるインターネット上の請願書にも17日時点で1600人余りの署名が集まっている。

 だがこうした動きに異議を唱える保守派も多く、ワシーム容疑者に同調してバローチさんの家族には殺害する以外に「選択肢はなかった」と主張する声も上がっている。(c)AFP/Shazia BHATTI