【7月16日 AFP】トルコ軍の一部がレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領政権の転覆を謀る行動を起こし、16日朝までに多数の死傷者が出た。

 15日夜に首都アンカラ(Ankara)と最大都市イスタンブール(Istanbul)の通りには兵士と戦車が現れ、夜通し爆発音が鳴り響いた。トルコのアナトリア(Anadolu)通信は、これまでに少なくとも60人が死亡し、クーデターに関与した疑いでトルコ軍の754人が逮捕されたと伝えた。死者の大半は民間人だという。トルコ政府当局者は佐官29人、将官5人が解任されたと述べた。

 こうした動きに対してエルドアン政権は、クーデターの試みは失敗すると断言。AFP特派員によれば、エルドアン大統領は与党・公正発展党(AKP)の支持者に対し、首都アンカラ、イスタンブール、イズミル(Izmir)の路上に出て抗議するよう呼び掛けた。

 所在地不明の場所から携帯電話でテレビ会議機能「フェイスタイム(FaceTime)」を通じてテレビ出演したエルドアン大統領は動揺を隠せない様子で、自分はまだ政権の座に就いていると述べ、クーデターを支持する者は「非常に高い代償」を払うことになると警告。「クーデターの首謀者らが成功することはないと確信している」と語った。

 大統領筋によると、エーゲ海(Aegean Sea)沿岸で休暇を過ごしていたエルドアン大統領にとってクーデターの企ては寝耳に水だったとみられ、同大統領は専用機でイスタンブールに向かった。

 イスタンブールの空港で数百人の支持者に出迎えられたエルドアン大統領は、今行われているのは国家への反逆であり、占拠者に国を明け渡すことはないと述べた。

 イスタンブール市内では、ボスポラス海峡(Bosphorus Strait)に架かる橋の1つの付近に集まっていた群衆に向かってトルコ軍が発砲するところをAFPのカメラマンが目撃している。また、アナトリア通信は、アンカラの議会で爆発があったと伝えた。

 また、トルコの大手民間メディア企業グループ、ドアン・メディアグループ(Dogan Media Group)が兵士らの集団に襲撃されたと同グループ傘下のCNNトルコ(CNN-Turkey)が報じた。

■エルドアン大統領の政敵は関与を否定

 15日深夜、イスタンブールとアンカラ上空で戦闘機が飛ぶ音をきっかけにクーデターとみられる動きが始まった。

 国営テレビ局TRTによれば、クーデターを試みたトルコ軍の一部は声明で戒厳令と外出禁止令を布告。声明には「祖国平和評議会(Council for Peace in the Homeland)」との署名があったという。

 クーデターの試みが軍全体で幅広い支持を得ているのか、あるいは軍内部の小規模の反乱分子によるものなのかは不明。いまのところ氏名を明らかにして声明を出した反乱側の人物はいない。

 イスタンブール市内では、通り過ぎる戦車にやじを飛ばして憤りを表す市民と、歓声を上げて喜ぶ市民の姿がみられた。上空からは16日未明になっても戦闘機が飛行する音が聞こえ、混乱が続いている。

 エルドアン大統領は、今回の事件の原因は「平行国家」と「ペンシルベニア(Pennsylvania)」にあると述べ、米ペンシルベニア州を拠点とする政敵、イスラム教指導者フェトフッラー・ギュレン(Fethullah Gulen)師について言及した。エルドアン大統領は常々、ギュレン師が自身の失脚を狙っていると糾弾してきた。

 しかし、ギュレン師を信奉し、ヒズメット(奉仕)と呼ばれる社会運動を行う人々は「私たちは、いかなる形であってもトルコの内政に軍が介入することを許し難く思っている」と述べ、エルドアン大統領の主張を強く否定した。(c)AFP/Fulya Ozerkan with Stuart Williams and Caroline Henshaw in Istanbul