■「ここはイスラム王国だ」

 ハメンクブウォノ10世は、変更の正当性を主張しており、何をもってしても体制の変更を止めることはできないとしながら、インドネシアの近代化に順応する必要性を説いている。

 地元メディアに対しては、「ジョグジャカルタの王宮には、変更できない世襲制度という伝統はない。そしてすべてのスルタンは制度を変えることができる」と語った。

 しかし、親族や地元のイスラム系組織などからは、ハメンクブウォノ10世の考えに反対する声も上がっている。

 地元の強硬派イスラム組織「イスラミック・ジハード・フロント(Islamic Jihad Front)」のメンバーは、「ハメンクブウォノ10世は伝統を守るべきだ。なぜなら、ここはイスラム王国だからだ」と語気を強めた。

 ただ、インドネシア全体では、これが初の女性君主ではない。現在はイスラム教徒が多数派だが、ヒンズー教徒や仏教徒の王国も数世紀にわたって存在しており、約300の少数民族もいる。

 13世紀後半から数世紀にわたり、現在のインドネシアの大部分と重なる領域に栄えたマジャパヒト(Majapahit)王国では、複数の女性の君主が存在した。また、スマトラ(Sumatra)島西部アチェ(Aceh)にあったイスラム王国にも女性スルタンがいた。

 ただ、この後継者をめぐる騒動は当面おさまる気配はなく、ハメンクブウォノ10世の戴冠記念日と誕生日を祝う5月の式典にも暗い影を落とした。

 式典を欠席したハメンクブウォノ10世の義理の兄弟は、「いまや王族の9割はスルタンを尊敬していない」と感情をあらわにした。(c)AFP/ Olivia Rondonuwu