【7月13日 AFP】HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に対する抗レトロウイルス療法は、片方だけが感染者のカップル間でコンドームを使わない性行為が行われている場合でも、HIV感染リスクを大幅に低減させるとの研究結果が12日、発表された。

 米国医師会雑誌(JAMA)に発表された今回の研究は、一方だけが感染者の、いわゆるHIV感染不一致カップルを対象に行われた。感染したパートナーが自身のウイルス量を投薬療法で抑えている状況での無防備な性行為を通じた感染リスクの度合いを調べることを目的としており、同種の調査としては最大規模となる。

 調査の対象となったカップル900組のうち、約3分の1が男性間性交渉者(MSMMen who have Sex with Men)で、残りの3分の2が異性愛者だった。

 中央値1.3年にわたる追跡調査期間が経過後の調査では、ウイルス量を抑制するための薬を服用しているHIV感染者が、カップルのパートナーを感染させたケースは一件もなかった。

 だが、調査開始時にはAIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)の原因となるHIVに感染していなかったパートナーがその後、感染者となったケースが11件発生した。うち10件は、男性間性交渉者のケースだった。研究チームによると、この新たにHIVに感染した人のうちの8人が、パートナー以外の相手と無防備な性交渉を持ったことを認めたという。

 分子レベルの分析でも、カップルの一方が感染していたHIVと、そのパートナーが新たに感染したHIVとが一致したケースは一件もなかった。研究チームはこの結果に基づき、カップル間の感染率をゼロとした。

 だが、研究チームは、この結果についてのさらなる追跡調査が必要と注意を促している。

 英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(UCL)のアリソン・ロジャー(Alison Rodger)氏が主導した論文には、「これらの結果は、HIV感染不一致カップルがコンドームを使わない性行為を行うことが安全かどうかということに直接的な答えを出すことはできないが、(特に異性愛者の)カップルが自らのリスクを受容する際の根拠となる参考情報を提供している」と記されている。

 今回の研究について、米ハーバーUCLA医療センター(Harbor-UCLA Medical Center)の専門家らは、カップル間の感染リスクがゼロであることを意味すると解釈してはならないと、JAMA誌に同時掲載された解説記事で警鐘を鳴らしている。

 そして、HIV感染者は、パートナーとコンドームを使わない性行為をするのであれば、少なくとも6か月前から継続的に抗レトロウイルス薬を使用するべきと指摘しつつ、「HIV感染の総体的なリスクは小さいかもしれないが、特に男性間性交渉者などの比較的高リスクのグループに関しては、そのリスクがゼロではないこと、そして実際のリスク値は不明であることを、臨床医学者らは明確にする必要がある」と述べている。

 専門家らはまた、「対象とするカップルの数を増やし、追跡調査の期間を長くして、さらなる研究を実施する必要がある」と付け加えた。(c)AFP