【7月13日 AFP】AIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)の世界的流行を2030年まで止める目標に向けた努力が停滞していると、国連合同エイズ計画(UNAIDS)が12日、報告書を発表し警告した。報告書によると、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の成人の新規感染者の数は、ロシアを中心に複数の地域で増加しているという。

 UNAIDSの報告書「Prevention Gap」によると、過去20年間のHIV新規感染者数は特に子どもの間で大幅に減少した。その一方で、成人での同減少傾向は過去5年間で失速、もしくは一部で増加に転じているという。

 HIVの感染流行は過去10年間で減少傾向にあるが、世界ではまだ3670万人のHIV/AIDS患者がいる。その大半はサハラ(Sahara)以南のアフリカに分布している。

 特に子どものHIV感染予防は世界的に大きく前進し、報告書によると15歳未満の子どもの新規感染は2010年以降で56%、2000年以降では70%減少している。昨年の感染数は約15万件となった。

 一方で、同報告書によると、世界では過去5年間に、少なくとも毎年190万人の成人がHIVに感染している。ほとんどの地域は、ほぼ横ばいの状況だが、東欧地域から中央アジア地域にかけては、2010年以降、毎年新規感染が57%の急増を示している。

 新規感染の80%はロシアで、10%はウクライナでのものだった。報告書はその原因を「予防プログラム、特に注射薬物使用者のハームリダクション(健康被害を予防または軽減させる)介入の適用が低いこと」にあるとしている。

 ミシェル・シディベ(Michel Sidibe)UNAIDS事務局長は、ロシアでの新規感染全体の半数以上が薬物注射をしている人たちであることを指摘し、「この人たちに働きかけなければ、この感染を制圧することはできないだろう」と警告した。

 世界的には、注射薬物使用者および男性間性交渉者では、一般集団よりもHIV感染リスクが24倍高く、また性産業従事者の場合も同10倍になると報告は述べている。

 UNAIDSはさらに、東部・サハラ以南アフリカに大半の患者が分布している現状に深刻な懸念を表明している。

 同地域における成人の新規感染件数は、2010年以降で4%の低下がみられるが、今回の報告は感染者間での際立った男女間の不均衡を指摘した。同地域の15~24歳のHIV新規感染全体の4分の3は、思春期の少女と若い女性だった。

 その原因は、未成年結婚、幼児結婚、強制結婚を含む、女児に対する性的虐待・暴力の水準が極めて高いこと、また、性的不平等と不名誉のために女児と女性がHIVサービスを利用できないことにあるという。(c)AFP/Nina LARSON