【7月11日 AFP】陸上競技大国のケニアが新たなドーピング疑惑で注目を集めている問題を受け、世界反ドーピング機関(WADA)は同国政府に対し、「クリーンなスポーツを守るためには迅速に行動すべき」と勧告した。

 9日のドキュメンタリー番組で伝えられたドイツ公共放送連盟(ARD)と英紙サンデー・タイムズ(Sunday Times)による新たな調査で、ケニアのアイトン(Iten)にある一流選手が集う練習施設でドーピングがはびこっている疑惑が発覚。この施設は、英国をはじめケニアのライバルも含めたほかの国の選手も使用している。

 ARDとサンデー・タイムズが以前に行った共同調査では、ロシアによる国ぐるみのドーピングが明るみに出て、同国の陸上選手が国際大会への出場を禁止される事態に発展した。

 一方、ケニアではこの3年間で約40人の選手がドーピング検査に落ちるなど、高潔性への評価がずたずたになっているのと同時に、世界屈指の中長距離ランナーを輩出している裏の実情が暴かれている。

 WADAからロシアと同様の処分を科せられる可能性を示されたことを受け、ケニアの国会は数週間前に、ドーピングおよびドーピング製品の提供を犯罪行為とする法律を制定したばかりだが、今回の疑惑は同国にとって大打撃になる。

 問題の番組は大部分が隠しカメラで撮影されており、海抜2400メートルに位置するケニアや欧州の長距離選手に人気のトレーニング施設に、撮影スタッフが選手のふりをして潜入。持久力を向上させる造血剤のエリスロポエチン(EPO)の箱が施設内に置かれているところや、ゴミ箱に捨てられた使用済みの注射器の映像などが放送された。

 EPOは施設近くにあるほとんどの薬局で入手することができ、さらに2人の医師が選手のふりをした撮影スタッフにドーピング製品を喜んで提供すると申し出た。

 この医師のうち一人は、「3か月以内」にパフォーマンスが劇的に改善すると請け合い、英国人選手3人を含む「50人以上」の選手にドーピング製品を提供したと明かしており、「ドーピング検査の対象になったとしても、何も見つからない。それがトップアスリートに必要なことだ」と語っていた。(c)AFP