【7月10日 AFP】(更新)スペイン東部テルエル(Teruel)で9日、闘牛の競技中に闘牛士が牛に角で突かれ、観客らの目の前で死亡した。スペインで闘牛中に闘牛士が死亡したのは約30年ぶり。

 死亡したのはスペイン人闘牛士のビクトル・バリオ(Victor Barrio)さん(29)。体重500キロを超える牛に角で突き飛ばされた。血を流して地面に横たわるバリオさんに仲間の闘牛士たちが駆け寄って牛から引き離しアリーナ外に助け出したが、バリオさんは胸部を負傷しており、その場で死亡が確認された。バリオさんが突き飛ばされる様子はテレビでも中継されていた。

 闘牛主催者のタウロエモシオン(Tauroemocion)がAFPに語ったところによると、バリオさんは2008年のデビュー以来、闘牛士として世界各国を転戦していた。

 スペインメディアによると、スペインで闘牛の競技中に闘牛士が死亡したのは、1985年に当時21歳の新鋭「エル・イジョ(El Yiyo)」ことホセ・クベロ(Jose Cubero)さんが牛に心臓を突かれて死亡して以来となる。

 このほか、昨年にはスペインの著名闘牛士の「パキリ(Paquirri)」ことフランシスコ・リベーラ・オルドネス(Francisco Rivera Ordonez)さんが牛に脚の付け根を突かれて重傷を負った。オルドネスさんの父親も有名な闘牛士だったが、1984年にアンダルシア(Andalusia)で行われた闘牛で雄牛に刺されて死亡している。オルドネスさんは「パキリ」の名を父親から受け継いでいた。

■「危険で残酷」と批判も

 公式統計によるとスペインでは2014年、雄牛関連の行事が1868件開催されている。

 雄牛関連イベント主催者の全国組織「ANOET」によると「雄牛ビジネス」は毎年、人口4700万人のスペインに600万人の観光客を呼び込み、35億ユーロ(約3900億円)の利益を生み出している。

 しかし近年、闘牛や関連行事は残酷で危険なスポーツだと動物愛護団体の非難を浴びており、こうした行事を中止する町や地域も出ている。また、先月に行われたスペイン総選挙でも、動物権利政党「PACMA」が同党史上最多となる得票数を記録している。(c)AFP