【7月9日 AFP】米テキサス(Texas)州ダラス(Dallas)で、警官の暴力に対する抗議デモ中に発生し警官に5人の死者と7人の負傷者が出た銃撃事件の容疑者は、投降説得を試みた交渉人に対し、犯行の目的は白人警官殺害だと述べていた。同市警察のデービッド・ブラウン(David Brown)署長が8日公表した。

 ダラスでは7日夜の事件当時、今週初頭に起こった警察による黒人男性2人の殺害に対する抗議デモが行われていた。同様のデモは米国の他の都市でも行われた。事件では一般市民2人も銃撃を受けて負傷したという。

 同国メディアは、銃撃事件の容疑者が、昨年まで米陸軍予備役だった同市在住のマイカ・ジョンソン(Micah Johnson)(25)と報道した。報道によるとジョンソン容疑者は犯罪歴や過激派組織との関連はないという。

 バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は、狙撃スタイルで警官を狙い撃ちした今回の銃撃事件は「警察に対する卑劣で計画的な犯罪だ」と述べ、実行犯は法による裁きを受けると述べて国民の団結を呼びかけた。

 人口約120万人のダラスで行われたデモでは、銃撃が始まると参加していた数百人が散り散りに逃げ惑った。今回の事件現場は、1963年に当時のジョン・F・ケネディ(John F. Kennedy)大統領が暗殺された現場からも遠くない。

 警察の公表によると、ジョンソン容疑者は立てこもった駐車場ビルで警察と銃撃戦を繰り広げ、数時間の交渉を経た後、警察が仕掛けたロボット爆弾により爆殺された。

 ダラスのマイク・ローリングス(Mike Rawlings)市長は、黒人女性1人を含む数人が拘束されたものの「捜査にあまり協力的ではない」と述べた。警察は先に3人が拘束されたと公表していた。

 2001年9月11日の米同時多発攻撃以来、最も多くの警官が命を落とした今回の銃撃事件で、米国内で既に問題となっている人種間の緊張が今後エスカレートする可能性が高い。

■「彼は白人を殺害したかった」

 米ニュース局CNNは、整えられた短い髭を生やし、アフリカ風のチュニックを着て拳を振りかざす黒人の男の写真を容疑者として報道した。

 ブラウン署長は、「容疑者は、最近の警官による(黒人に対する)銃撃事件について憤っていると話した。白人に対して怒りを感じており、白人、特に白人警官を殺害したかったと話した」と述べ、警察が「男」としてしか公表していない容疑者が殺害される前、交渉人に対して犯行の動機をうかがわせる内容の話をしていたと明らかにした。また、容疑者はどの組織にも属していないと述べたという。

 ローリングス市長は、警察が立てこもりを終結させる最善の方法はロボット爆弾を送り込むことだと判断したと述べ、「容疑者は皆を殺すと話していた。また、爆発物を仕掛けたと発言したため、(ロボット爆弾が)解決するための最も安全な方法だと判断した」と付け加えた。

 ダラス警察は後に、付近の捜索が行われた結果、爆発物は発見されなかったと短文投稿サイト「ツイッター(Twitter)」で明らかにした。(c)AFP/Laura Buckman, with Olivia Hampton in Washington