【7月7日 AFP】ロシアの組織的なドーピングを内部告発したユリア・ステパノワ(Yuliya Stepanova、旧姓:リサノワ〈Rusanova〉)は6日、陸上欧州選手権(European Championships in Athletics 2016)の女子800メートル予選に臨み、中立の立場としてリオデジャネイロ五輪に出場するための最初のステップを踏んだ。

 オランダ・アムステルダム(Amsterdam)のオリンピスフ・スタディオン(Olympisch Stadion)での競技に臨んだステパノワだったが、おとぎ話は実現しなかった。失速して集団から大幅に遅れてしまったステパノワは、600メートルを過ぎたところで脚を引きずりはじめ、自力で歩きながらフィニッシュラインを通過。当初はタイムが認められたものの、立ち止まった際にレーンの内側に入ったため失格となった。

 観客から沈黙の歓迎を受けていたステパノワは、競技後に右の足底筋膜(土踏まず)のじん帯が損傷していると診断されたものの、この負傷は回復が早いため、リオ五輪への出場の可能性をわずかに残している。

 2013年に2年間の出場停止処分を科された30歳のステパノワは、露反ドーピング機関(RUSADA)の元職員である夫のヴィターリー・ステパノフ(Vitaly Stepanov&category%5B%5D=AFPBB>記事&category%5B%5D=ワールドカップ&category%5B%5D=五輪">Vitaly Stepanov)さんとともに、ロシア陸上界にまん延しているドーピングの実態を暴露。ロシアを離れてドイツを経たのち米国で亡命生活を送る中、母国のドーピング問題を激しく批判しながらも、中立的な立場で競技に出場する機会を得た。

「ものすごい重圧でした。私のことを信じていない人々がたくさんいました」と語ったステパノワは、「ここに来られてとてもうれしく、本当に感謝しています。今では状況は改善されてきています」とほっとした様子だった。

 ステパノワは続けて、「ロシアのメディアは、私たちが本当のことを話しているという事実を疑っています。彼らは私たちが報復を望んでいたと考えていて、ロシアの人々も私の話をそうとらえているのです」とし、「ロシアは今でも私たちの話を信じていません。ドーピング疑惑は真実ではないと」と訴えていた。

 出場選手からは温かい歓迎を受けたと強調したステパノワは、「更衣室で座っていたら、今日ライバルとして競い合った女子選手全員が私のところへやって来て、私の行動と勇気に感謝してくれました。みんな私を支持してくれて、欧州の選手から支えられている気がしています」と明かした。(c)AFP/Luke PHILLIPS