【7月3日 AFP】(写真追加)フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)新大統領の就任以来、麻薬密売に関与した疑いのある10人が警察に殺害された。当局者が2日明らかにした。ドゥテルテ氏が物議を醸している犯罪撲滅に容赦なく乗り出したことを物語っている。

 ドゥテルテ氏は先月30日に宣誓就任した。大統領選では、フィリピンを麻薬がまん延する国にしないために必要だとして、徹底した治安対策で何千人もの犯罪者を殺害すると明言し、大きな支持を集めて圧勝した。

 首都マニラ(Manila)に隣接するブラカン(Bulacan)州の警察は、ドゥテルテ氏の大統領就任当日である先月30日に麻薬密輸を集中摘発し、9人を殺害したと発表した。いずれも容疑者が歯向かってきたためやむを得ず殺害したとしている。

 また、フィリピン中部の都市ドゥマゲテ(Dumaguete)の警察関係者はAFPに対し、麻薬密輸に関与した疑いがある人物の自宅に踏み込んだところ、相手が銃を使用したため応戦し、死亡させたと述べた。

 ドゥテルテ氏が大統領選で勝利してから就任するまでの間、同氏の奨励を踏まえて警察が殺害した犯罪容疑者は既に数十人に上っていた。

 ドゥテルテ氏は就任演説で、犯罪対策で法律に違反する行為はしないと強調。ただ、その後行った一連の演説で、犯罪容疑者や麻薬常用者の殺害を共産武装勢力や市民に求める考えを示した。また、大量殺人罪で訴追される恐れのある警察官を大統領の権限で守ると約束した。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)のフィリピンのコーディネーターを務めるウィルノー・パパ(Wilnor Papa)氏は、ドゥテルテ氏が刑事手続き抜きの殺害をあおっていると警告した。

 1日にはマニラ市内のスラムで大量の銃弾を撃ち込まれた遺体が発見され、自警団さながらの活動が行われている兆しが示された。遺体の上には「俺は中国系の麻薬密売組織のボス」と書かれた紙が置かれていた。(c)AFP