【7月1日 AFP】米国の数百社に及ぶ企業が、未承認の幹細胞治療を患者に直接提供しているとの調査結果が6月30日、発表された。これは、急速に成長している業界での安全性や詐欺に関する懸念を浮き彫りにするものだ。

 米科学誌セル・ステムセル(Cell Stem Cell)に発表された研究論文は、米国の少なくとも351の企業が、570の個人診療所で、未承認の幹細胞治療を提供していることを明らかにした。

 これらの診療所は、筋肉や骨の疾患、心臓病、免疫系に関する問題、脊髄損傷、美容上の理由などに対する「幹細胞による治療行為」を提供すると主張していた。

 提供されていたのは、主に脂肪由来および骨髄由来の幹細胞に基づく治療で、胚性幹細胞(ES細胞)をうたっている企業は1社のみだった。

 論文によると、研究チームはインターネット検索を通じて、これら企業のリストを作成したという。調査結果については、「幹細胞治療をうたう医療行為の消費者向け直接広告に携わる米国企業に関しての、今後の調査のための基礎となるはずだ」と研究チームは述べている。

 幹細胞治療の広告を掲げている診療所が最も多い州は米カリフォルニア(California)州で113か所。米フロリダ(Florida)州の104か所、米テキサス(Texas)州の71か所がそれに続いた。

 論文の共同執筆者で、米ミネソタ大学(University of Minnesota)の生命倫理学者レイ・ターナー(Leigh Turner)氏は、この状況について「これは、人々が安全で有効な治療を利用していることになっているのだろうか。それとも、未承認の人体実験が行われているということなのだろうか」と問いかける。

「このような市場には歯止めを設けるべきだが、その歯止めはどこにあるのか。規制機関はどこなのか。米国では、幹細胞に基づく治療と、それらを生成する医療機器は、米食品医薬品局(FDA)が規制することになっているが、そうした国で、このような業界全体がどのようにして出現したのだろうか」(ターナー氏)

 国際幹細胞学会(ISSCR)によると、FDAは、骨髄移植として一般に知られている白血病の治療と、一部の骨、皮膚、角膜の疾患や損傷の治療などのために幹細胞を使用することを認めているという。しかし、その他の幹細胞治療については「前途有望ではあるものの、まだまだ初期の実験段階にあるにすぎない」とISSCRはウェブサイトで指摘している。

 今回の研究では、未承認の幹細胞治療で起きる恐れのある問題に関しての詳細な調査は行われなかった。(c)AFP