■撲滅できない権力者たちの慣習

 保守的な地域では、公の場で女性を目にすることはほとんどない。また花婿が花嫁の家族に払う婚資の額が急騰し、男性にとっては結婚が難しくなっている。そうした環境の中、バチャ・バジの少年たちは女性のような足取りで歩いたり、時に化粧をしたり足に鈴をつけたりして、女性に取って代わっている。

 ウルズガン州の住民の多くは、バチャ・バジをイスラム教で禁じられている小児性愛や同性愛とみなしていない。もし社会規範に守るべき順番があるとすれば、女性を暴行するよりも少年を暴行するほうが道義的だと思われている。

 英人権団体「子ども兵士の徴用廃止を目指す連合(Coalition to Stop the Use of Child Soldiers)」のチャル・ラタ・ホッグ(Charu Lata Hogg)代表は、バチャ・バジについて「軍閥や司令官、政治家など権力をもつ地位にある人物が行ってきたことなので、撲滅が難しい。女性との接触が限定されているという事実が、この慣習を維持させてきたという側面もある」と言う。

 ウルズガン州では少年と遊ぶことが豊かさのしるしとして自慢されることも多い。携帯電話の待ち受け画面にしている「ハンサムな少年」の写真をAFPの記者に見せびらかす幹部も何人かいた。

 近くの村の警官は「美しいバチャを見に来てくれよ」と言って、手元に置いて2年になるという10代の少年を自慢してきた。アヘン畑に囲まれた検問所の隅に座り、客のために静かにお茶を注いでいた少年の目には少しアイシャドーが入り、帽子からは金髪に脱色した巻き毛がのぞいていた。

「警察署長たちは若い男子を求めて近所を徘徊している。わが子にきれいな服や新しい服を着せて目立ってしまうのが怖い」と、村人は語った。

 バチャ・バジの慣習は、アフガニスタン軍の強化のために何十億ドルも費やしてきた米国など北大西洋条約機構(NATO)加盟国を危うい立場に追い込んでいる。

 ウルズガン州政府関連機関の代表は、首都カブール(Kabul)の検事総長から送られてきた書簡2通をAFPに示した。1通は昨年、もう1通は今年1月の日付で、それぞれ性的虐待と子どもの違法徴兵に関する捜査を命じるものだった。しかし、その代表は「調査のために検問所を訪れることは、一つもできていない」と声をひそめて語った。「もし捜査を始めたら、警察幹部らが私たちを生かしておくと思うか?」

 タリバンが子どもの性奴隷を用い、警察内部を攻撃しているというAFPの報道には、国際的に大きな反響があった。アフガニスタン大統領は28日、警官による慣行化された児童性的虐待について「徹底的な調査」を命じた。(c)AFP/Anuj CHOPRA