■利用される少年たちの復讐心

 タリバンは少年たちを色仕掛けの「ハニートラップ」として使っていると、元警官のマティウッラーさん(21)は言う。彼は昨年春に起きたスパイ攻撃の唯一の生存者だ。

 彼によれば、攻撃を仕掛けたのは検問所の司令官の性奴隷だった10代のザビフラ。ある夜、ザビフラは銃を乱射し、一緒に寝ていた司令官を含む警官7人を殺害した。

「彼(ザビフラ)はタリバンを呼んできて、すべての死体をライフルの銃床でつつき、生存者がいないか確認した。私は死んだふりをしていた」と、マティウッラーさんは前頭部の深い傷を見せながら言った。「タリバン兵たちが私たちの武器や弾薬を集めていると、ザビフラが『みんな死んでいる』と宣言した」。マティウッラーさんは今、服の仕立ての仕事をしている。

 タリバンはアフガニスタンを支配していた1996年から2001年にかけてバチャ・バジの慣習を禁止していた。そのため少年を使って攻撃を仕掛けることは絶対にないと主張しているが、政府や人権団体らは否定している。

 マティウッラーさんをはじめ、こうした攻撃の生存者たちは、タリバンは警察内部におけるバチャ・バジの制度化を利用していると指摘する。

 当局筋によれば、ウルズガン州にある警察の検問所370か所のほぼすべてにおいて、バチャ・バジが最大4人雇われている。彼らは性奴隷としてだけでなく、兵力としても違法に採用されている。バチャ・バジを警官職の特典とみなして、そうした少年がいない検問所への異動を拒む警官もいるという。

 多くが無償で使われている少年たちは検問所でのおぞましい虐待に耐えかね、警察への報復を夢見るようになり、タリバンの勧誘の格好の餌食にされる。警察の搾取から逃げるには、タリバンに協力するより他に選択肢がないことが多いからだ。