【7月25日 AFP】西アフリカの辺境では、イスラム過激派による暴力行為で難民危機が発生し、多くの人々が困窮している。しかしニジェールでは、地元のある小企業の飢饉(ききん)対策事業が成果を上げている。

 同国公用語のフランス語で「食品加工会社」を意味するSTAという社名を掲げるこの企業は、世界中の救援活動家らが活用しているピーナツを主原料とする栄養補助食品「プランピーナッツ(Plumpy'nut)」を現地生産する数少ない会社の一つだ。当初4人だった従業員数は、過去15年で100人以上に急増した。

 イスマエル・バルムー(Ismael Barmou)社長(35)は首都ニアメー(Niamey)でAFPに対し、「わが社は昨年、深刻な栄養不足に苦しむ27万人の子どもたちを救う一助になれた」と語った。

 1990年代後半に高プロテインの特殊栄養食品としてプランピーナッツを開発したのは、フランスに本社を置くニュートリセット(Nutriset)。同社は現地生産を促進するプログラムの一環で、ニジェールをはじめアフリカの数か国に生産技術を輸出した。

 領土の大部分が乾燥した貧困国ニジェールは、度重なる人道危機や食料不足に苦しんでいる。自宅を失った人や、近隣のナイジェリアやマリのイスラム過激派から逃れてきた難民が、現在約30万人に上っている。

 加えて先月には、ナイジェリアを拠点とするイスラム過激派組織ボコ・ハラム(Boko Haram)が国境を越えてニジェール南東部のボッソ(Bosso)に大規模な攻撃を仕掛け、さらに5万人が家を追われた。

 フランスや英国に留学した後、母国に戻ったバルムー氏は2001年、最貧家庭向けに小麦粉を製造する会社としてSTAを起業した。転機は2005年に訪れた。同年の食糧危機をきっかけに事業を拡大し、「予防的対応が可能な企業を目指し、治療補助食品」の生産に参入したのだ。

 STAは、株式の3分の2をニジェールの出資者、残りをニュートリセットが保有する民間企業。ニアメーの自動生産工場には正社員115人が常勤する他、ピーナツの収穫期には地元の農場にさらに約200人の季節労働者が加わる。

 年間の売上高は60億CFAフラン(約11億円)。生産量は1日当たり約27トンで、昨年の年間生産量は8500トンに上った。

 個別包装されたプランピーナッツは、国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)などの支援団体に納品され、そこから栄養を必要とする人々に配給される。プランピーナッツを利用している病院長の話によると、子どもが1日3袋食べれば、「健康的な標準体重に達するのに必要な全栄養素を摂取できる」という。

 STAの生産部長は、「プランピーナッツは、人道支援員らの要望に応えられる利点を備えている。冷蔵も調理も必要なく、ただ袋を開けさえすればいい」と語った。(c)AFP/Patrick FORT