【6月21日 AFP】生後1歳3か月の娘を浜辺に置き去りにし、溺れ死にさせたとして計画殺人の罪に問われている母親の裁判が20日、フランス北東部サントメール(Saint-Omer)で始まった。母親は自らの犯行について「魔術」のせいと言う以外に説明のしようがないと主張した。

 出廷したのはセネガル出身のファビエンヌ・カブー(Fabienne Kabou)被告(39)。幼少時代はダカール(Dakar)で裕福に育ち、留学したパリ(Paris)で30歳年上の彫刻家と恋に落ちた後、2人の間の娘を2011年8月に出産した。

 しかし、2013年11月、パリの自宅から1歳3か月の娘を連れて仏北部のリゾート、ベルクシュルメール(Berck-sur-Mer)まで出かけると、娘を浜辺に一晩置き去りにし死なせた。幼女の遺体は翌朝、地元の漁師によって発見された。

 法廷でカブー被告は「魔術と言う以外に説明できない」と主張。娘の殺害に至るまでに、さまざまな「呪術医や心霊治療家ら」に助言を求めて約4万ユーロ(約470万円)を費やしたと明かしたほか、「長年、朝起きるのに苦労していた。足がまひし、壁が震えて止まらないといった幻覚も起きていた」とも説明した。

 裁判所に精神鑑定を依頼された精神科医は「セネガルの魔術に関連する文化的資料や個人史に心理状態が大きく影響されており、それが彼女の世界観を極端に変容させている」と証言。一方、別の鑑定医は、出産に伴う重篤なうつ状態が犯行の引き金になった可能性を示唆した。

 カブー被告の弁護士は裁判前に、女の子は二人の自宅で出産され出生届も出されていなかったと指摘している。被告の母親も含めて近しい人の誰もこの女の子のことを知らなかったという。父親にあたる男性は子どもの認知もしていなかったとされ、弁護士は被告が深刻な孤独に陥っていたとの考えを示している。

 有罪と認められれば、被告は終身刑を言い渡される可能性がある。(c)AFP/Zoé LEROY