【6月16日 AFP】ネパールの政府と毛沢東(Mao Zedong)主義派による内戦を背景にした映画『黒い雌鶏(Kalo Pothi)』が、カトマンズ(Kathmandu)の満員の映画館で今月、公開された。きらびやかなインドのボリウッド(Bollywood)映画よりも、骨太の国産映画が好まれるようになってきた兆しだ。

 数十年間にわたり、ネパールではラブソングとアクションシーンを盛り込んだ、インド映画のコピーが大量生産されてきた。

 しかしインド映画への敗北が続くと、ネパール映画界は歌と踊りのフォーマットから脱却し、自国の現実を映し出すストーリーへとかじを切った。

『黒い雌鶏』は、辺ぴで貧しい村に住む2人の少年についての物語。内戦下で育ち、本作で監督デビューを果たしたミン・バハドゥール・バム(Min Bahadur Bam)氏の実体験に基づいている。

 バム氏は「われわれはネパールの観客を過小評価しがちだが、彼らは非常に知的だ。映画監督として、ネパールの観客を尊重し、リスクを取る時が来た」と話した。

 バム氏は、ベネチア国際映画祭(Venice International Film Festival)を含む、海外での映画祭で複数の賞を受賞している若い世代の監督の一人だ。国内でファンを獲得し、カトマンズでの朝8時からの上映には多くの観客が列を作った。

 ボリウッド映画と比べるとごく低予算のネパール映画は従来、商業的な成功を収めることはまれだった。しかし2012年に公開された、カトマンズでの銀行強盗を描いた映画『Loot』は、都会的なセリフやリアリズムで地元の観客の心をつかんだ。

 低予算で作られた同作はカルト的人気を博し、続編が今年公開される予定だ。

『Loot』の成功は、デジタル技術を身に付けた新世代の映画製作者に道を開いた。デジタル技術により、若い世代の製作者は、新鮮なストーリーの映画を低コストで作れるようになった。

『Loot』で強盗役を演じ、一躍スターになったネパール人俳優のダヤハン・ライ(Dayahang Rai)氏はAFPに対し、世界の映画を見て育った若い世代の観客が、映画の動向を左右していると指摘。「若い世代の注目を集めたいなら、ネパール特有の、われわれ自身のストーリーを語らなければならない」と話した。(c)AFP