【6月15日 AFP】インド西部に生息するカエルの一種、ボンベイナイトフロッグ(学名:Nyctibatrachus humayuni)は、同両生類7000種の中で他に類を見ない交尾姿勢(体位)を好むとの研究結果が14日、発表された。これまで確認されているカエルの交尾姿勢としては7例目となるという。

「背面またぎ」と命名されたこの新たな交尾姿勢は、それがどんなによじれて曲芸的なものであろうとも、精子と卵子を受精させるための方法にたどり着く性選択の進化の事例研究の一つだ。

 インド・デリー大学(University of Delhi)のサティアバマ・ダス・ビジュ(Sathyabhama Das Biju)教授率いる研究チームは、研究対象のこの小型カエルの交尾現場を確認するために、インド西部マハラシュトラ(Maharashtra)州ハンバーリ(Humbarli)村近くの密林で40日間、夜間の張り込みを行った。

 前後の文脈からボンベイナイトフロッグの風変わりな行動についての説明文だけを抜き出すと、それはまるで、1970年代の性愛指南書からの抜粋のようだ。

 論文では「雄は、雌には抱きつかずに、葉や枝、木をつかんだり、その上に前脚をついたりして、雌の背中の上にまたがる」と交尾が始まる際の状況が描写されている。

 雌は、2匹がいる葉の上に卵を放出して受精に備えるが、ここからの行動は、一般的な交尾とはかなり様相が異なる。

 研究チームは、科学誌「PeerJ」に発表した研究論文の中で「雄は、雌の背中の上に射精する。精子はその後、雌の背中から後ろ脚を伝って流れ落ち、卵に到達。受精となる」と説明している。

 この間、ボンベイナイトフロッグの雄と雌の間には数ミリの隙間が保たれ、ほとんどの場合、お互いに決して触れ合うことはない──強いて言うならカエル版「タントラセックス」のようなものだろう。

 この儀式的な交尾の最終段階で、雄は慎重に脇へ退き、頬を膨らませて卵に覆いかぶさる。

 これは、未来のカエルたちをヘビから守るための行動かもしれない。研究チームによると、カエルの卵をヘビが食べることも今回初めて確認されたという。

 ヘビに食べられることを免れた卵は、最終的に葉から落ちて、下を流れる小川でオタマジャクシになる。

 ビジュ氏は声明を発表し、「他に類を見ない繁殖行動」であることを指摘しながら、「これは、無尾目両生類の進化生態学と習性を理解する上で基礎となる発見だ」とカエルの学術的な分類名を用いて述べた。

 しかし、ボンベイナイトフロッグの独自性は、これだけではなかった。

 通常、交尾相手を引き寄せるために鳴くのは雄だが、この種では雌も、こうした鳴き声を発する。これが進化の上でどのような目的を果たす可能性があるかについては、まだ科学的に解明されていない。(c)AFP/Marlowe HOOD