【6月3日 AFP】パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)に住むファトマさん(30)一家の生活は、11歳の長男が性的暴行を受けて以来、悪夢と化した。事件により家族全員が深い傷を負い、転居も余儀なくされたという。

 7児の母であるファトマさんは、長男の身元が特定されないよう仮名でAFPの取材に応じ、「ある晩、息子が遅く帰ってきた。明らかに様子がおかしかった」と当時について語った。

 帰宅した長男は、遠戚の男と近くに住む男の2人組に人里離れた家に連れて行かれ、服を脱がされた上に、パソコンでポルノ動画を見せられたと話し、そして逃げようとしたが捕まったと打ち明けた。これを聞いたファトマさんは、直ちに警察に通報し、20代の男2人が逮捕された。

 保守的なガザ地区では、タブー視される問題について声を上げる犠牲者は少ない。それでもファトマさん一家は裁判を起こした。容疑者の1人は収監されたが、もう1人はすぐ釈放された。

 その後、ファトマさん一家は、恥の壁、沈黙の壁に直面することになった。

「私たちは持っているお金を全部使って引っ越した。私は苦痛のあまり病気になり、子どもたちも間接的な影響を受けた」と、彼女は「民主主義と紛争解決のためのパレスチナセンター(PCDCR)」が運営する支援施設で語った。