【5月28日 AFP】シリアに展開する米軍特殊部隊が、クルド人民兵部隊「クルド人民防衛部隊(YPG)」の記章を着用して任務に当たっていたことがフランス通信(AFP)の報道写真から明らかになり、米政府は27日、YPGを「テロ組織」とみなすトルコ政府への釈明に追われた。

 約200人の米軍特殊部隊がシリア北部で、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が首都と位置づけるラッカ(Raqa)をISから奪回すべく戦闘を続ける地元民兵らの支援や、有志連合軍に空爆目標情報を伝える任務を行っていることは以前から公然の秘密だった。

 その際に米兵らがYPGの記章を着用して任務に当たっていたことが、AFPカメラマンが撮影した写真から明らかになった。

 だがトルコ政府は、YPGを非合法組織クルド人武装組織「クルド労働者党(PKK)」の一派とみなしており、記章着用を行き過ぎた行為と受け止めた。

 メブリュト・チャブシオール(Mevlut Cavusoglu)外相はこうした行為は「偽善」と「ダブルスタンダード(二重基準)」にほかならないと米国を非難。YPGの記章着用は国際テロ組織「アルカイダ(Al-Qaeda)」やIS、ナイジェリアのイスラム過激派組織ボコ・ハラム(Boko Haram)などのロゴマークを着用したに等しいと批判した。

 これに対し米国防総省は、対ISで共同戦線を張るクルド人とアラブ系の合同部隊「シリア民主軍(Syrian Democratic Forces)」の主体を成すYPGとの協力関係は今後も維持していくとしたうえで、記章は取り外すと発表した。

 イラク駐留米軍のスティーブ・ウォーレン(Steve Warren)報道官は記者会見で「YPGの記章を身に着けることは許可しておらず不適切だ」と述べ、是正措置を取ったことを明らかにした。

 米軍の特殊作戦部隊が同盟軍の記章を着用することは少なくない。だがウォーレン報道官はYPGをめぐる「政治的にデリケートな状況」を考えれば今回に関しては不適切との認識を示した。(c)AFP/Fulya OZERKAN and Dave Clark in Washington