【5月27日 AFP】チェルノブイリ(Chernobyl)原子力発電所の事故後に見捨てられ、地図にも載っていないウクライナ中部のゴーストタウンに、同国東部の内戦から逃れてきた人々が住み着いている。

 オルビタ(Orbita)という名のこの町は、旧ソ連時代には一度も登録されることはなかった。この町には原発が建設され、2万人の労働者が住む予定だったが、1986年4月のチェルノブイリ事故後に原発計画は破棄された。

 林を抜け、かつての原発建設予定地に向かう道はぼろぼろで、町の入り口を示す標識はさびに覆われている。ただ、廃虚となった建物の隣にある2つの小さな遊び場は清潔で整っている。10歳の金髪の少女、アリーナちゃんが心配ごとなどほとんどなさそうな笑顔で、祖父のウラジミール・リマルチェンコさんの傍らで遊んでいる。

 アリーナちゃんの家族は、内戦勃発直後にウクライナ東部の故郷を脱出してきた。内戦ではこれまでに9300人が死亡し、170万人が家を追われている。リマルチェンコさんは「どこに行けばいいか分からなかった。とにかく、親戚が住んでいた中部まで行く電車に乗った。その後、道中で知り合った人から偶然、オルビタのことを聞いた」と話す。

 ウクライナ東部の各地に住んでいた8家族が、住宅価格の安さや平穏さに引かれてオルビタに移り住んできた。旧ソ連時代に建設されたアパート1戸の購入価格は、1500ドル(約16万5000円)を下回る。首都キエフ(Kiev)の平均価格4万ドル(約440万円)と比べるとごく少額だ。