■唯一の存在

 石筍の断片の中からは、火の痕跡と焦げた骨のかけらも見つかっている。

 研究チームは「初期のネアンデルタール人は、この時代に欧州に住んでいた唯一のヒト属集団だった」と論文に記し、彼らを「世界初の洞窟探検家」と称した。「今回の研究結果は、ネアンデルタール人の社会に近代的な要素が含まれていたことを示唆している。これらの要素が、従来考えられていたより早い時期に現れたことが、これで証明できる」

■儀式用か?

 今回の研究では「これらの構造物に関与したネアンデルタール人の集団が、これまで考えられていたより複雑な、ある程度の社会組織を持っていた」ことを主張している。

 1992年に最初に発見され、最近に再調査が行われたこの石筍建造物の機能については、まだ推測の域を出るものではない。

 初期人類が使用した洞窟の他の事例に基づくと、この石筍建造物が象徴的または儀礼的な目的で使われていたことは「推測可能」と、論文の執筆者らは指摘する。だがその一方で、日常生活での使用、あるいは隠れ家として使用された可能性も否定できないという。

「最も驚かされたのは、自然光から遠く離れた、洞窟の非常に奥深くまで探索する能力を、ネアンデルタール人が持っていたことだ」とジョベール氏は話す。

「日々の生存という目的を超越し、道を照らすために火を用いながら厳しい地下の環境に立ち入る能力が、ネアンデルタール人にあったことの証拠を、今回の研究が提供していると考えている」

(c)AFP/Pascale MOLLARD Mariëtte Le Roux