【5月26日 AFP】米国のバラク・オバマ(Barack Obama)政権が全米の公立学校に対し、トランスジェンダー(性別越境者)の生徒・学生に自分の認識する性別に基づいたトイレの使用を認めるよう要請する指針を通達したことを受け、テキサス(Texas)など11州の政府が25日、一方的な「行政命令」によって現行法を書き換えようとしているとして、連邦政府を相手取り訴訟を起こした。

 司法省と教育省は今月13日、全米の公立学校地区と大学に送付した通達で、トランスジェンダーの生徒・学生にとって安全な環境を提供するためのガイドラインを規定。特に学校側に対し、トランスジェンダーの生徒らが出生証明書に記載されている性別ではなく、自認する性別に応じたトイレを使用することを認めるよう求めた。

 この指針は、連邦政府の助成を受ける教育機関での性差別を禁じる1972年成立の連邦教育法第9編(Title IX)に基づいた措置とされ、オバマ政権は、同法により生徒らの性自認は保護されていると主張している。通達に法的拘束力はないが、指針に背いた学校に対しては、訴訟や補助金削減などの措置が講じられる可能性がある。

 11州の政府は、テキサス州ウィチタフォールズ(Wichita Falls)の連邦地方裁判所に提出した訴状で、連邦政府は「民主主義的プロセスを無視し、子どもとプライバシーを保護する常識的な政策を踏みにじった」と非難。裁判所に対し、連邦政府の通達を無効とするよう求めている。

 訴訟には原告として、テキサスを筆頭に、アラバマ(Alabama)、アリゾナ(Arizona)、ジョージア(Georgia)、ルイジアナ(Louisiana)、メーン(Maine)、オクラホマ(Oklahoma)、テネシー(Tennessee)、ユタ(Utah)、ウェストバージニア(West Virginia)、ウィスコンシン(Wisconsin)の各州が参加。うち9州は、共和党員が知事を務めている。またこのほかに、同じく共和党が政権を握っているミシシッピ(Mississippi)とカンザス(Kansas)の2州も、オバマ政権の指針に従わない方針を示唆している。

 米国では、トランスジェンダーのトイレ使用をめぐり、当事者らと保守派との間での論争が激化している。この「トイレ論争」は、ノースカロライナ(North Carolina)ではすでに連邦政府との法廷闘争に発展。トランスジェンダーが出生時の性別に合わせたトイレを使用するよう義務付けた同州の州法をめぐり、州政府とオバマ政権が訴訟合戦を繰り広げている。(c)AFP