【5月23日 AFP】パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)に住むモハメド・シーク(Mohammed al-Sheikh)君(12)の夢は、自らの身体能力を生かしてギネス世界記録(Guinness World Records)に登録されること──その驚異的な柔軟性で体を「あらゆる方向」へと動かすことができ、スパイダーマンの異名を持つ彼だが、イスラエルによる封鎖で「身動きが取れなくなっている」ことを感じるという。

 身長1.37メートル、体重29キロのモハメド君は、自身の体をありえない方向に曲げることができる。あたかも特別なことではないといった様子で、両足を背中側から回して両肩にのせたり、クモのようなポーズを一瞬でとったりする。

 モハメド君は、レバノンのオーディション番組に出演し、その柔らかい体を利用した技で視聴者からの票を1400万ほど獲得した。

 優勝することはできなかったが、現在ではガザ市南部の地元で、自身の技がギネスブックに登録されることを待ち望んでいる。

 AFPが確認した電子メールによると、ギネス側はモハメド君の「チェストスタンドを維持したままで全身回転。1分間での記録」の申請を受理しているようだ。添付された動画には、うつ向けに寝転がり、地面につけた胸部を中心に両脚で「歩く」モハメド君の姿が捉えられていた。

 モハメド君の記録は、現在のギネス世界記録よりも4回多い1分間に33回。今後数週間以内に世界記録に認定されるのではと期待を膨らませている。

 しかし、モハメド君にとって、ガザから出るという夢は世界記録以上に大きいもののようだ。

 イスラエルは、過去10年にわたってガザを封鎖している。外の世界についてモハメド君が知っていることは、動画投稿サイトのユーチューブ(YouTube)の映像を通じてのみだ。

「多くのアラブ人や世界中の人々が、フェイスブック(Facebook)に投稿された僕の動画に『いいね』を押して応援してくれる。封鎖のせいで世界の人々と会ったり、交流したりできないことが悲しい」

 彼は現在、ガザ市のビーチでラクダや馬を使ったスタントを行い、通りがかりの人々を喜ばせている。現実逃避的な行動だが、それでも「自由」を感じることができるのだという。そして「僕は空中にいる。そこには封鎖はないから」とコメントした。(c)AFP