【5月20日 AFP】南米チリの太平洋沿岸では過去数か月にわたり、クジラやサケ、イワシなどの海洋生物の死骸が大量に流れ着いている──これら大量死はエルニーニョ現象が原因と疑われている。

 昨年、300頭を超えるクジラの死骸がチリの人里離れた湾で発見され、科学者らの間に衝撃が走ったが、これはその後に続く数々の大量死事象の始まりにすぎなかった。

 今年初めには、プランクトンの異常増殖で起きる赤潮によって、ロスラゴス(Los Lagos)州で推定4万トンのサケが窒息死した。これはチリの年間漁獲量の約12%にあたる。同国のサケ漁獲量は、ノルウェーに次ぎ世界2位だ。

 また最近では、約8000トンのイワシの死骸が南部のケウレ川(Queule River)河口に流れ着いている。南部チロエ島(Chiloe Island)の海岸では大量の貝の死骸が打ち上げられた。

 当局は、原因である「赤潮」を問題視して対象地域での漁業を禁じた。これにより、漁業関係者数千人が操業停止に追い込まれた。漁業者やその家族はこの措置に対して怒りをあらわにし、本土からチロエ島への道をタイヤを燃やして封鎖。政府に対し、月額150ドル(約1万6500円)の補助金を増額するよう求めた。

 チリ南部の海では毎年のように赤潮の発生が見られるが、今年は例年よりもより北方の海でもこの現象が確認された。

 科学者らの意見は、太平洋赤道域の海面温度が上昇するエルニーニョ現象が、これら一連の異変の原因ということでおおむね一致している。

 チリでは、太平洋に面する海岸線が全長4000キロにわたっており、エルニーニョの影響は大きい。同国の漁業振興研究所(IFOP)は、今回のエルニーニョについて「過去65年で最大級」としている。

 ただ、一連の大量死について、別の要因を疑う科学者もいる。コンセプシオン大学(Conception University)の海洋学者、ラウラ・ファリアス(Laura Farias)氏は、昨年のクジラ大量死が「生態系上の問題」によるもので、イワシや貝などの大量死事象とは無関係である可能性があると述べている。また、サケや貝の大量死については、南部パタゴニア地域での養殖事業の規模拡大が関連している疑いがあるとしている。(c)AFP/Giovanna FLEITAS