【5月20日 AFP】30億年以上前の火星で、隕石(いんせき)の衝突によって発生した巨大津波が北部の平原全体をのみ込み、古代の海の海岸線を完全に変形させたとの研究論文が19日、発表された。

 火星の地質図作成に基づく今回の成果は、生命探査の新たな手掛かりとなる可能性があるほか、34億年前に起きた大規模な洪水が火星北部の低地を広大な海に変えたとする説を、後押しするものでもあるという。

 だが、この説に異議を唱える一部の科学者らは、このはるか昔に消えた海の海岸線とされる地形は現在、でこぼこで不規則であり、海を取り囲んでいたとみられる地形ではないと指摘していた。

 論文の主執筆者で、米アリゾナ(Arizona)州トゥーソン(Tucson)にある惑星科学研究所(Planetary Science Institute)の研究者であるアレクシス・ロドリゲス(Alexis Rodriguez)氏は、AFPの取材に「われわれの発見は、この海の仮説と、一定高度に沿って分布する海岸線が存在しない謎とを擦り合わせるものだ」と語った。

 こうした巨大津波は、数億年の間に何十回も起きている可能性が高いが、英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に発表された今回の研究では、数百万年間隔で発生した2回の巨大津波に着目した。

 1回目の津波は、岩や土石を数十キロから数百キロ内陸に運んだ。それよりはるかに寒冷な時期に起きた2回目の津波では、波が空中で凍結して巨大な氷の塊が形成された。

 ロドリゲス氏と研究チームは、これら2回の津波の中心が、それぞれ直径約30キロの2個のクレーターであることを突き止めた。