【5月18日 AFP】ハンガリー東部にあるデブレツェン(Debrecen)刑務所では、金曜日は「犬の日」だ。近くの保護施設から来た5匹の捨て犬たちが楽しそうにしつけを受ける。しつけているのは、受刑者たちだ。

 2014年に始まったこの革新的な事業は、囚人と犬の両方が社会復帰するために役立つ社会的能力の習得を支えている相互に有益なプロジェクトだ。地元の犬の訓練士、アンナマリア・ナジ氏は意外な組み合わせを眺めながら「囚人と捨て犬の運命はとても似ている。それぞれの道を切り開くために、お互い助け合っているのだ」と言う。

 7週間のプログラムの期間中、規律、けんかの回避、口輪をはめる訓練など、受刑者たちは犬と一緒に10項目の課題に取り組む。 受刑者の中には暴力犯罪者もいる。

 5匹は昨年11月に、森の中で捨てられ寒さで震えた状態で発見された。コーカシアン・シェパードの雑種で、だらりとした耳と頭に黄色の毛の房が生えているのが特徴だ。「近づくことさえ大変だった」と訓練所の行動専門家、アグネス・ニューソさんが振り返る。

 このプロジェクトはハンガリーで開発された「ミラー・メソッド」と呼ばれる技法を採用している。トレーナーが犬ではなく、自分の過ちを修正することに焦点を当てた技法だ。犬は単にトレーナーの過ちを「鏡映し」にしている。

 雑種犬はしつけが難しいため、引き取りたがる人がいないとナジ氏は言う。しかし、この犬たちはそれが理由でわざと選ばれている。コースが始まってからたった数週間後には双方の絆はすでに固く結びつき、受刑者らが部屋に入った途端に犬たちは飛び跳ねて迎えに行く。

 人間の方も同じ気持ちだ。受刑者のローランドさんは犬に口輪をつけ、抱擁してなでながら「このコースは私にも犬にも良い影響を与えている。犬に会った後は何日も、ずっといい気分だ」と語った。