■犬との触れ合いで消える不信感

 普段、囚人は内に引きこもっているが、犬といると気持ちが和んでいると刑務所の職員は言う。同刑務所のサンドル・ペーテル・パンチュサク所長は「(受刑者たちは)自分がどこにいるのかを少し忘れることができ、不信感も消える。犬は人間よりも正直だ」と話す。

 プログラムへの参加は長い順番待ちとなっており、そのこと自体も受刑者が元から持っているポジティブな面の強化や、少なくとも維持につながるという。「忍耐強くなり、他人をよりよく理解することに役立ち、最終的には(刑務所の)外でよりうまくやっていけるようになる」と同所長は言う。

 刑務所にいる約300人の受刑者のうち30人が、これまでにこのプロジェクトを完了した。職員によると、プロジェクトの「卒業生」は誰一人としてその後、犯罪に関与していない。

 そして犬の方も7週間のコースを完了して証明書を受け取った31匹のうち、12匹が新しい飼い主に引き取られた。デブレツェンの端にある動物保護施設「Together for Animals」のトロさんは「囚人たちの犬のしつけは魔法みたい」だと言う。

 この施設では、飼い主に捨てられたり虐待されたりした約200匹の犬と猫が、暗い犬舎でおりの中に入れられ、平均3~4年を過ごしている。「かわいくなければ、ここにいるのは6年にも、7年にも、もっとにもなり得る」とトロさん。人の足音が聞こえると犬たちが騒がしくほえたてる。「刑務所に行くことは犬にとって、とても大きな冒険のようのもの。誰かにやっと気をかけてもらえるのだから」(c)AFP/Peter MURPHY