【5月3日 AFP】環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)は2日、米国と欧州連合(EU)間の自由貿易協定である環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)交渉に関する機密文書を公開し、TTIPは環境や消費者の安全を損なう危険性があると述べた。

 グリーンピースは、世界最大の二者間貿易協定となるTTIP締結に向け非公開で行われている交渉に「光を当てる」ことを目的に、248ページに及ぶ文書をオンライン上に公開した。

 独ベルリン(Berlin)で記者会見したグリーンピースは、同協定は環境や消費者の安全よりも企業の利益を優先し、米国や欧州の消費者に規制撤廃によるリスクを強いることになると指摘。「この協定は、環境やEU・米国の8億人以上の人々の生活に広範囲にわたって影響を及ぼす恐れがある」と警告した。

 米国とEUは、2013年にTTIP交渉を開始し、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領が退任する前の今年中に締結することを目指しているが、米国と欧州の両方で強い反対に直面している。

 EUの加盟28か国を代表して交渉に当たっている欧州委員会(European Commission)は、グリーンピースは文書の解釈において、「完全に間違っている」と述べた。

 一方、米通商代表部(USTR)は、「これらの文書に与えられている解釈は、よくても誤解を招くものであり、最悪の場合には完全に間違っていると思われる」だと述べた。

■「不吉な予感」

 欧州では、TTIPが大企業の利益を優先し環境保護や医療規制を損なうのではないかという深い懸念があり、ドイツやフランス当局も協定に関する疑念を徐々に高めている。

 グリーンピースによると、機密文書には、EU域内に現存する食品表示や危険な化学物質の承認に関する規制が自由貿易の障害となった場合、撤廃できるよう米国が求めていることなどが示されているという。

 今回公表された文書は、4月に行われた最新の交渉の時点でまとめられたTTIP草案の3分の2を占め、通信や自動車、農業など広範囲にわたっている。

 21世紀の自由貿易協定と言われるTTIPは、規制の調和や投資障壁の引き下げ、公共調達の市場開放、情報交換など新規分野への取り組みなどに重点を置いている。

 先月の交渉を受けて米欧双方は、交渉は進展したが2016年に合意するには「相当量の仕事」が残っていると語った。関税に関する問題は97 %が解決済みだが、農作物を含む最も困難な分野の3%が未解決だという。(c)AFP/Alex PIGMAN and Frank ZELLER in Berlin