【4月30日 AFP】オランダ政府は29日、原子力発電所で事故が起きた場合に付近の住民を守るため、甲状腺被ばくを抑える効果があるヨウ素剤を1500万錠発注したことを明らかにした。隣国ベルギーの国境付近にある原発の老朽化が進み、懸念が高まっていた。

 オランダ保健省の報道官はAFPに対して、これらのヨウ素剤は原発から半径100キロメートル以内に住む妊婦と18歳未満の子どもに新たに配布されると述べた。これまでの配布対象者は同20キロメートル以内の40歳以下の全住民とされていた。

 オランダ国内の原発は南西部ボルセラ(Borssele )の1か所だけだが、ドイツのエムスラント(Emsland)、ベルギーのドール(Doel)とティアンジュ(Tihange)の各原発に近いオランダ国内の地域の住民も追加配布の対象となる。

 オランダ政府はまず妊婦と子どもにヨウ素剤を配布し、余った錠剤は事故が発生した場合に「旅行者、訪問者、労働者」を含む影響を受ける恐れのある全ての人が利用できるようにするという。

 これに先立ちベルギー政府は28日、原発事故に備えて国民1100万人全員にヨウ素剤を配る方針を示していた。詳細は来年決めるとしている。

 ベルギーの原発では何者かの人為的な操作による潤滑油の漏出や、原子炉容器にひびが発見されるなどのトラブルが相次いだ。昨年はブリュッセル(Brussels)と仏パリ(Paris)のテロへの関与が疑われる男がベルギーの原子力関係者をひそかに撮影していたことも判明し、原発の安全や保安をめぐる懸念が高まっていた。(c)AFP/Dave Clark