【4月26日 AFP】ベトナム中部ハティン(Ha Tinh)省で製鉄所の廃水が原因で魚が大量死した疑いがあるとして、保有する台湾企業グループ「フォルモサ(Formosa)」に対して国営メディアが異例の批判を繰り広げている。

 中部沿岸には最近、魚の死がいが大量に打ち上げられ、その中には沖合や深海にしか生息しない希少種も含まれていた。これは国民の間に不安を招くとともに、地元の漁師に打撃を与えている。

 この問題で国営メディアが注目しているのが、ハティン省にフォルモサが数十億ドルを投じて建設した製鉄所の廃水用パイプラインだ。全長1.5キロのこのパイプラインは製鉄所から直接海に引かれている。

 国営紙タインニエン(Thanh Nien)はこのパイプラインについて、それ自体は法的に問題がないものの、フォルモサに許可されているのはあくまで処理済みの廃水の排出だけだと指摘。環境省のボー・トゥアン・ニャン(Vo Tuan Nhan)次官の話として「(フォルモサが)何を、どのように排出したのかが問題だ」と伝えた。

 同紙によると、フォルモサはパイプラインの清掃用に有毒化学物質約300トンを輸入していたが、ベトナム環境総局は報告を受けていなかったという。ただ、同紙はこの物質が実際に使用されたかどうかについては触れていない。

 地元の漁師らの話によると、製鉄所できる前は魚やエビが豊富に獲れたが、操業が始まってから漁獲量が急減したという。

 一方、フォルモサの関係者は今週、インターネット上に掲載されたインタビューで、地元社会は「魚やエビと、最先端の製鉄所のどちらを取るかを決める必要がある」と述べ、一方は犠牲にせざるを得ないとの認識を示している。

 ベトナム政府はこれまでに、魚の大量死の調査のため現地に専門家チームを派遣。原因究明に向けて国際的な支援の要請を検討する意向も示しているほか、責任がある人を法の裁きにかける方針を明らかにしている。(c)AFP