【4月26日 AFP】カナダのジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相は25日、フィリピンで昨年9月にイスラム過激派に拉致され人質となっていたカナダ人男性が殺害されたと発表した。これに先立ちフィリピン当局は、離島で外国人男性の切断された頭部を発見したと明かしていた。

 トルドー首相は、「昨年9月21日からフィリピンで人質に取られていたカナダ人のジョン・リズデル(John Ridsdel)さんが殺害されたという知らせを受け、憤慨している」と述べ、「これは冷酷な殺人行為であり、責任を負うのは同氏を拉致したテロリスト集団だ」と非難した。

 リスデルさんは、もう一人のカナダ人観光客ロバート・ホール(Robert Hall)さん、ノルウェー人のリゾート支配人、フィリピン人女性1人と共に、ホロ島(Jolo)から500キロ以上離れた場所にある主要都市ダバオ(Davao)に近いマリーナに停泊していたヨットで7か月前に拉致された。

 その6週間後、イスラム過激派グループ「アブサヤフ(Abu Sayyaf)」がジャングルに拘束された人質らの動画をソーシャルメディア上に公開し、外国人3人の身代金として1人当たり10億ペソ(約24億円)を要求。男性らはカメラの前で命乞いをさせられていた。

 その後数か月にわたって同様の動画が投稿され、そのたびに人質らが衰弱していく様子が見て取れた。

 直近に公開された動画で、退職し60代後半とみられるリズデルさんは、3億ペソ(約7億円)の身代金が支払われなければ今月25日に殺されると訴えていた。

 フィリピン警察によると、支払期限が過ぎた数時間後、バイクに乗った2人組がホロ島の役場近くに、切断された頭部を置いていったという。同島は首都マニラ(Manila)の南約1000キロに位置するほぼ無法地帯と化した場所で、アブサヤフの最大拠点の一つとなっている。

 トルドー首相は、フィリピン政府と協力してリズデルさん殺害犯らの捜索と訴追を行っていく方針を示すとともに、残る人質の解放に向けて尽力していると語った。

 2002年から14年にかけて、米国は特殊部隊の顧問らをフィリピンに派遣し、現地部隊に対する訓練や情報提供を行い、多くのアブサヤフ指導者らを死亡、もしくは逮捕に導いた。

 だが、米特殊部隊が撤退した後、アブサヤフはさらに大胆な拉致行為を繰り返すようになり、フィリピン部隊との激しい戦闘も相次いだ。これにより、アブサヤフが同国南部で依然脅威となっている様子が浮き彫りになった。

 最近の一連の拉致事件を受けて、インドネシアの政治・治安を担当するルフット・パンジャイタン(Luhut Panjaitan)調整相は、海賊行為が横行し周辺を航行する船舶が襲撃を受けているアフリカのソマリアになぞらえ、この地域が「新たなソマリア」になる危険性があると警告した。(c)AFP/Michel COMTE