【4月19日 AFP】米国の控訴裁判所は18日、脳疾患を抱えるアメリカンフットボールの元選手らが、ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)に補償を求めていた訴訟で、NFL側が推定10億ドル(約1090億円)を支払うという和解案を支持した。

 東部ペンシルベニア(Pennsylvania)州フィラデルフィア(Philadelphia)の第3連邦巡回控訴裁判所は、昨年4月に署名された和解案について、3人の裁判官が全員一致で承認した。

 選手の一部は弁護士を通じ、慢性外傷性脳症(CTE)の犠牲者への補償内容が十分ではないとして、和解案の受け入れを拒否していた。CTEは、死亡した一部の元選手に見つかった脳疾患として知られているが、存命中の人間に対しては、診断が不可能とされている。

 裁判所は和解案を支持することについて、69ページにわたる判決文の中で「不完全ながら公平なもの」と記した。

 裁判所は「和解案には不服を申し立てる人がいるものだ」とすると、内容について「人気スポーツが人間に与える本当の危険性を暴こうとした選手、研究者、支援者の努力の証し。完全とは言えないが、公平なものだ」と述べた。

 NFLの幹部は先月、競技中に負った頭部外傷とCTEとの関連を、初めて認めていた。

 和解案が正式なものとなり、これから65年間で、元選手ら2万人以上が関わる数千件の訴訟が決着することになる。

 NFLの元選手ではおよそ6000人、10人中3人前後が、アルツハイマー病もしくは認知症を発症する可能性があるとみられている。

 米国の人気週刊誌「スポーツ・イラストレイテッド(Sports Illustrated)」によれば、選手は年齢や経験年数によって、平均19万ドル(約2070万円)を受け取ることになるという。

 また、ルー・ゲーリッグ病(Lou Gehrig's Disease)とも呼ばれる筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された選手は、500万ドル(約5億4500万円)の補償が受けられる。

 一方、CTEと診断された選手の家族は、最大で400万ドル(約4億3600万円)を受け取り、パーキンソン病やアルツハイマー病を患った選手は、最大で350万ドル(約3億8000万円)が補償されることになっている。(c)AFP