■恐れられる米国人顧客

 パナマ文書に米国人の名前が少ない理由がもう一つある。

 外国の銀行を利用した米国人の高額かつ露骨な脱税を阻止する必要に駆られ、米政府は近年、租税逃れや資産隠しをほう助する金融機関を標的に、数々の訴訟や容疑者らの逮捕、法律の厳格化を通じて取り締まりを強化してきた。

 特に標的にされたのがスイスの銀行だ。スイス金融大手のUBSとクレディ・スイス(Credit Suisse)は、米市民の資産隠しに協力したとしてそれぞれ7億8000万ドル(約850億円)と26億ドル(約2800億円)の罰金を科された。

 このため「世界には、米国人顧客を非常に恐れるタックスヘイブンがいくつかある。米国の標的になる可能性があると知っているからだ」と、オフショア金融サービスとタックスヘイブンの役割について分析した書籍「宝島(原題:Treasure Islands)」の著者で政治アナリストのニコラス・シャクソン(Nicholas Shaxson)氏は指摘する。

 ともあれ、パナマ文書に米国人の名前がほとんど見つからない事実は、陰謀説の根拠にもなっている。ロシアなど他国の不安定化を狙う米中央情報局(CIA)の画策だというものだ。

 一方、ICIJのウォーカー・ゲバラ氏は、約1150万点あるパナマ文書はまだ調査の途中であり、大物米国人の名前がこれから出てくる可能性もあると語った。「文書は大量にある。これから発見されるものもあるだろう。調査は進行中だ」 (c)AFP/Jeremy TORDJMAN