■最初に啓発されたのはクリンスマン元監督

 ドイツ代表の合宿にはじめてブルーム氏を招いたのは、レーブ監督の前任で、2004年から2006年まで代表を率いたユルゲン・クリンスマン(Jurgen Klinsmann)氏だった。米カリフォルニア(California)を拠点とするクリンスマン氏は、米西海岸での生活を続けるうちに、ヨガの効用に気づいた。

 そして、レーブ監督がそこからさらに一歩踏み込み、ブルーム氏を欧州選手権2008(UEFA Euro 2008)に向けたチームの正式なスタッフとして採用すると、2012年の欧州選手権(UEFA Euro 2012)では、選手たっての願いでチームに帯同するまでになった。

 ブルーム氏によれば、呼吸を意識し、ポーズを維持するエクササイズを通じて、試合後のドイツ代表の選手は「すばやくリラックスできる」のだという。また「体を伸ばせるし、普段とは違った肉体的負荷を体にかける体験にもなる」という。

 今では、ドイツのヨガシーンを引っ張るインストラクターとなったブルーム氏。ヨガでは線香をたいたり、極東の特別な道具を使用したりすることもあるが、「代表選手とのエクササイズでは、あまり瞑想(めいそう)の面には重きを置いていないんです」と、その部分をカットした「お手軽バージョン」を実践している。

 ドイツ代表では、ブラジル大会でチームを優勝に導くゴールを決めたマリオ・ゲッツェ(Mario Goetze)が、今ではすっかりヨガに目覚めてしまった。元代表の長身CBペア・メルテザッカー(Per Mertesacker)もそうだ。

 イングランド・プレミアリーグのアーセナル(Arsenal)でプレーするメルテザッカーは、昨年のイングランドFAカップ(14-15 FA Cup)決勝のアストン・ビラ(Aston Villa)戦の前に、所属クラブでもヨガの「レッスンをさぼったことは一度もない」と明かしている。

「すごく助かってる。精神的にも、肉体的にもね。やってみたら、効果は抜群だってわかるはずさ」とメルテザッカーは話している。

 ブルーム氏は、ヨガの精神面での効用について、選手が日々さらされている周囲からの重圧に対して、心のバランスを保つ助けになると話している。

「もっと早く、もっと効率的なものを」求められる現代社会にあって、ヨガはストレスとうまく付き合う強力な対応策になる。ブルーム氏はそう付け加えた。(c)AFP/Yannick PASQUET