■「草を食べる犬?」

 犬がとりわけ興味深い研究対象となっているのは、人類が定住して農業を始める前から「人間の最高の友達」になっていたからだ。

 犬がある一つの地域で、あるいは別々の複数の地域で飼い慣らされていたのかは、依然として不明だ。また、人間がオオカミの子どもを飼い始めたのか、オオカミが餌を求めて人間の生活領域に入っていったのかも不明だ。

 正確な血統がどうであれ、トゥマト犬はヒョードロフ氏をはじめとする科学者たちを当分の間、忙しくさせるとみられる。

 2匹目の子犬の脳は現在の犬やオオカミの脳と比較され、体内で発見された寄生虫や胃の内容物は分析される。胃の内容物は、同氏を特に興奮させている。

「2匹目の胃を開いたとき、私たちはとても驚いた。胃の中は、小枝や草だらけだった」と語る同氏。子犬たちが完全な肉食ではなかった、あるいは地滑りによって移動が制限され、空腹から草を食べ始めたのではないかと考えている。

 ヤクチア地方の永久凍土の融解により、今後さらなる歴史的発見が期待できるとヒョードロフ氏は指摘。有史以前とされるものの発見が、この10年で「数倍に」増加していると言う。「私たちの土地は永久凍土によって鍵が掛けられていたが、少しずつ秘密を明かし始めている」(c)AFP/Maria ANTONOVA