【3月25日 AFP】生物が独自に機能・自己複製するために不可欠な遺伝子だけしか含まない最小限のゲノム(全遺伝情報)を持った細菌を人工的に作ることに米国の研究チームが成功した。生命の起源の解明に向けた大きな一歩だ。米科学誌サイエンス(Science)が24日伝えた。

 この細菌のゲノムは「JCVI-syn3.0」と呼ばれている。含まれる遺伝子の数は、人間が約2万個なのに対し、わずか473個しかない。

 だが、今回の研究を率いたクレイグ・ベンター(Craig Venter)氏とクライド・ハッチンソン(Clyde Hutchinson)氏の2人と共同研究者らがこれまでに機能を特定した遺伝子は149個で、全体の3分の2ほどの遺伝子の機能は未解明だ。ベンター氏は世界で初めてヒトゲノムの解読を行ったことでも知られている。

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)の合成生物学者で今回の研究には参加していないクリス・ボイト(Chris Voigt)氏は「研究者の最初の仕事は、これらの遺伝子の役割を調べることだ。これにより、基礎生物学の新たな知見が得られることが見込まれる」と述べた。

 だが、相同遺伝子(同一の起源を持ち、異なる部分があるが同じ機能を持つ遺伝子)の可能性がある遺伝子が他の生命体でいくつか見つかっている。このことは、これらの遺伝子が、現時点ではまだ機能が分かっていない普遍的なタンパク質をコード化していることを示唆している。

 研究チームは、健全な成長には必要だが生命維持には必須ではない遺伝子を特定するため、個別の遺伝子を取り除いたり、機能を失わせる実験を繰り返した。一連の実験を通して、生命活動の維持のために最小限必要なゲノムが得られた。