【3月18日 AFP】1989年に庭師として働いていたサウジアラビア王室の宮殿から総額2000万ドル(約23億円)相当の宝石を盗んだタイ人男性が17日、自らの行いを償うため、出家した。この事件は、タイとサウジアラビアの関係を長年にわたって冷え込ませるきっかけとなった。

 クリアンクライ・テチャモン(Kriangkrai Techamong)氏が1989年、サウジアラビアの王子の宮殿から宝石を盗んだことをきっかけに起きた通称「ブルーダイヤモンド事件」は、タイとサウジアラビアの確執をもたらした。両国の反目は現在もなお続いている。

 事件後、タイの警察当局は宝石の一部をサウジアラビアに返還したが、サウジアラビア当局側は返された宝石の大半が模造品だと主張。また、盗まれた宝石の中で最も貴重な50カラットのブルーダイヤモンドは現在も見つかっていない。

 タイで有罪判決を受けて刑期を終えたクリアンクライ氏は17日、地元メディアに対し、宝石を盗んだことで「雪崩」のように多大な苦痛が家族に押し寄せ、自らの人生があの事件に取りつかれてしまったと語った。

「私に起こった不幸のすべては、私が盗んだサウジの(ブルー)ダイヤモンドの呪いがもたらしたものだと確信している。だから、私の悪行を償うため、残りの人生は仏門に入ることに決めた」と、クリアンクライ氏はタイ紙タイ・ラット(Thai Rath)に語った。

 地元テレビ局は、北部ラムパーン(Lampang)県で、頭髪をそり、白い法衣を着て仏教僧になる儀式に臨むクリアンクライ氏が、寺院の参拝者から施し物を受け取る様子を放映した。タイのテレビ局チャンネル7(Channel 7)によると、クリアンクライ氏は、「ダイヤモンド級の知恵を持つ人」を意味する戒名を与えられたという。

 クリアンクライ氏は事件後すぐに逮捕され、禁錮5年の有罪判決を受けたが、逮捕前に宝石の大半を売りさばいていた。

 サウジアラビア側は長らく、タイの警察の捜査に落ち度があったと非難してきた一方、事件発生後、宝石が警察幹部らの手に渡ったとのうわさが広がった。

 サウジアラビア政府は、独自捜査のために実業家の男性をタイに派遣。しかし、サウジアラビアの外交官3人がバンコク(Bangkok)で射殺された数日後に、実業家の男性もバンコクから姿を消した。

 タイの警察幹部を含む容疑者5人が実業家殺害への関与で訴追されたが、2014年に証拠不十分で不起訴となった。土壇場で裁判官が交代された後の決定だった。

 サウジアラビアは、盗難および殺人事件が未解決だとして、ここ数十年にわたってタイに大使を派遣しておらず、二国間の渡航も制限している。(c)AFP