【3月10日 AFP】内戦が続いているソマリアに、20年ぶりにゾウが戻ったことが確認された。環境保護活動家らが9日、明らかにした。ケニアにいた1頭の個体が、数百キロの旅路を経て今月、短時間ながらソマリアに入ったという。

 このゾウは、モーガン(Morgan)と名付けられた30歳代の雄。ケニア沿海のタナ川デルタ(Tana River Delta)で昨年12月に追跡用の首輪を着けられていたが、今年2月半ばになって突然、ソマリアがある北に向かって移動を開始、3週間近くかけて国境まで到着した。

 環境保護活動家らは、戦争のため長らく姿を消していたモーガンが、古くから続く移動径路を覚えていたことに興奮。ゾウ保護団体セーブ・ジ・エレファンツ(Save the Elephants)のイアン・ダグラスハミルトン(Iain Douglas-Hamilton)氏は「自分がどこに向かっているのか、モーガンは心の中で分かっていたに違いない」と語った。

 モーガンは最初の夜にタナ川から20キロ歩き、翌日は深い森の中に隠れ、その後闇に紛れて移動を続けた。その後18日間、このパターンを繰り返した。ダグラスハミルトン氏は「彼は、アフリカのゾウにとって最も危険な部類に入る場所を縦断するため、この非常に極端な生き残り戦略を取った」と指摘している。

 ケニアの野生動物保護団体ノーザン・レンジランド・トラスト(NRT)の保護担当責任者、イアン・クレイグ(Ian Craig)氏は「モーガンのような大人のゾウは目的もなくうろつくことはない。おそらく、ゾウが何世代にもわたって使ってきたルートを若い頃に学び、それをたどったのだろう」との見方を示す。

 はるばる220キロを踏破してソマリアまでやって来たモーガンだが、実際にソマリアにいた時間は1日足らずで、国境からわずか3キロしか進まなかった。その後、おそらく交尾相手が見つけられなかったため、帰路に就いた。

 アフリカゾウは、至る所で象牙目的の密猟の危険にさらされている。象牙は中国では1キロ当たり約1100ドル(約12万5000円)の値が付く。(c)AFP/Tristan MCCONNELL