【3月5日 AFP】ドイツ政府は4日、隣国フランスに対し、独国境に近い仏フェッセンハイム(Fessenheim)にあるフランス最古の原子力発電所の閉鎖を要求した。しかし、仏原子力当局は「安全性の点では閉鎖する理由は何もない」と一蹴した。

 1970年代に造られたフェッセンハイム原発1号機で2014年4月9日、2つある安全装置の1つで水漏れが発生し、一時的に原子炉をコントロールできなくなった。原子炉冷却システムへのホウ素投入が決断されたが、仏原子力安全局(ASN)の報告はホウ素投入に言及していなかったと報じられている。

 メディアは「西欧の原子炉でホウ素を使ってシャットダウンすることを余儀なくされた事例を私は他に知らない」という原子力安全の専門家マンフレット・メルティンス(Manfred Mertins)氏の発言も報じた。独メディアは、トラブルの規模が当初伝えられたものより大きかった可能性があると報じている。

 これを受け、ドイツのバルバラ・ヘンドリクス(Barbara Hendricks)環境・建設・原子力安全相は「フランス政府に対しフェッセンハイムを閉鎖とするよう求める十分な理由があることが、この事故で再び示された」「私は、独仏国境地帯に住む人たちが不安を抱えていると指摘してこれまで何度も閉鎖を求めてきたし、これからも求めていく」などと述べた。

 しかし、仏原子力安全局は「原子力保安の観点から見て、フェッセンハイム原発を閉鎖にする理由は一切ない」と回答。仏原子力安全局ストラスブール(Strasbourg)支局のソフィー・ルトゥルネル(Sophie Letournel)支局長は「政府がエネルギー政策に基づく決定として」閉鎖を決定する可能性はあるが、安全性の面から言えばフェッセンハイム原発は「全体的に要件を満たしている」と説明した。

 フランスは総電力の75%以上を原発に依存し、世界の原発推進勢力をけん引する存在。一方のドイツは、2011年3月の東日本大震災に伴う東京電力(TEPCO)福島第1原発事故でメルトダウンが起きた後、原発の段階的廃止を決定している。

 ドイツはルクセンブルクとともに仏カットノン(Cattenom)原発についても安全上の懸念を表明している。また、スイス・ジュネーブ(Geneva)州は今月2日、隣接する仏アン(Ain)県にあるビュジェ(Bugey)原発について「故意に住民を命の危険にさらし、水を汚染している」として提訴した。(c)AFP/Frank ZELLER and Mathilde RICHTER