【2月28日 AFP】フランス・パリ(Paris)南部で27日、毎年恒例の国際農業見本市が開幕したが、会場に到着したフランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領が農業従事者らからブーイングを受け、農業省の展示が壊されるなどの事態が起きた。

 パリ市民らが自らのルーツに触れようと会場に押し寄せた一方、フランス農業の苦境に農業従事者はいらだちを強めている。

 オランド大統領とステファヌ・ルフォル(Stephane Le Foll)農相が開会式に出席するため、パリ南部のポルト・ドゥ・ヴェルサイユ(Porte de Versailles)にある広大な展示会場に到着すると、畜産農家の関係者からブーイングが飛んだ。また、仏全国農業経営者組合連盟(FNSEA)によれば、抗議活動の一環として展示場ブースの壁や備品を破壊した同連盟の会員5人が逮捕されたという。

 同見本市は9日間にわたって開催され、来場者は約70万人と予想されている。

 フランスではこの数か月、全土で農家のデモが行われ、農業従事者らがトラクターで道路を封鎖したり、官公庁の前に肥料を捨てたりするなどの抗議活動を行っているが、国民からはおおむね支持を受けている。

 中小規模の農家が加盟している団体、コンフェデラシオン・ペイザンヌ(Confederation Paysanne)の広報担当者はAFPの取材に応じ、毎年約5000人が離農しており、フランスの農業部門は「過去最悪の危機を迎えている」と話した。

 政府の発表によれば、困窮している農家は4万戸以上に及ぶという。

 過激な抗議活動が行われているフランス北西部からやってきたという女性(24)は、「酪農と養豚が盛んな土地です。でも、自殺する畜産農家がどんどん増えてきている」と話す。

 牛肉や豚肉、牛乳が値崩れを起こしている原因は、中国への輸出の落ち込みに加え、ウクライナ情勢をめぐる欧米の経済制裁に対する報復としてロシアが欧米産の食料品の大半を禁輸対象としたことにある。

 さらに、値下げ競争も年々激化し、卸売業者は仕入れ先に対してこれまで以上の大幅値下げを要求しており、そのしわ寄せが農家に及んでいる。(c)AFP/Gina Doggett