■失われた通常物質はどこに?

 研究チームによると、今回の発見によって、もう一つの長年の科学的疑問である「ミッシングバリオン」の問題に解決の糸口がもたらされるという。

 宇宙は、約70%を占めるダークエネルギーと25%の検出不可能なダークマター、そして約5%にすぎない通常物質(バリオン)で構成されると考えられている。惑星や恒星、そしてわれわれ人間も、この通常物質でつくられている。

 しかし問題は、天文学者らがこれまでに、通常物質の約半分の存在しか説明できておらず、残りは「行方不明(ミッシング)」とみなされていることだ。

 今回の最新研究で、研究チームは高速電波バーストの伝搬距離と、真空中を伝搬した場合に要すると考えられる時間を算定することができた。

 電波の到達時間が真空の場合より遅くなることは、発生源の銀河と地球との間にある、物質粒子が存在する空間を電波が通過してこなければならなかったことを示していると考えられる。

 このことについてキーン氏は、「宇宙空間は、完全な真空というわけではなく、密度が非常に低いだけ」と説明。そして、「そこには物質が存在するけれども、これまではそれを確認できなかったと考えられる。高速電波バースト信号に遅れが生じることで、それが分かる」と続けた。

 今回の観測結果に基づき「われわれは行方不明の通常物質を発見した」とキーン氏は主張している。(c)AFP/Mariëtte Le Roux